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【対馬市】国境の離島、ワーケーション誘致への軌跡vol.1

WORKATION

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  • ワーケーションの受け入れ先である自治体の魅力をお伝えし、地域での新しいライフスタイルをイメージするきっかけをお届けするこの連載。第二回目は長崎県対馬市です。観光商工課の永留さんに、同市におけるワーケーション誘致の経緯や現状について聞きました。

    豊かな自然に恵まれた、世界が注目する秘境の地

    九州と朝鮮半島の真ん中に浮かぶ国境の島、対馬。天然記念物に指定される3つの原生林や美しいリアス式海岸に囲まれ、その景観を生かした山海のアクティビティが充実しています。福岡からは飛行機、フェリー、高速船の3つのルートでアクセスが可能。飛行機を使えば30分ほどで到着し、船ならば、かつて遣隋使や朝鮮通信使も渡った海の道に歴史ロマンを感じながらゆっくりと訪れることもできます。また2020年7月に発売されたPlayStation 4用のアクションアドベンチャーゲーム「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」の舞台としても、世界中から脚光を浴びました(同作は鎌倉時代に起こった元寇がテーマ)。同作の映画化も決定し、今後も注目が続くと予想されます。

    観光以外の来島目的として新たな切り口

    対馬市観光商工課の永留さん

    これまで韓国人観光客によるインバウンド需要で栄えてきた対馬市。しかし現在、両国関係の悪化及び新型コロナウイルス感染症の影響もあり、国内外からの旅行者の取り込みは苦戦を強いられています。「来島目的の多様化を図る切り口としてワーケーション誘致を進め、対馬市の魅力を知っていただき、継続的な来島者増を図ろうと考えました」と永留さんは話します。

    ワーケーション誘致事業の本格始動

    2020年10月末、対馬市とHOnPro編集部の出会いが果たされます。実際にメンバーが対馬市でワーケーションを実施し、市に感想をフィードバック(詳細はHOnProマガジン「対馬で”アウトドア×ワーク”の体験レポート2020 vol.1」で紹介しています)。HOnProは、ワーケーションを制度化したい企業と高いポテンシャルを持つ対馬市を結び付ることによる、新たな対馬ファンの獲得を提案しました。「ちょうど予算計上に向けた準備期で、予算案に組み込むべく大急ぎで準備しました。財政規模に乏しい自治体ですので、国の交付金を申請して予算を獲得。令和3年度から本格的に誘致事業に乗り出しました」。

    新たなスタイルで企業を招く「ファムトリップ」

    一般社団法人daidaiの代表理事 斎藤ももこさん

    全国の自治体の多くがまずコワーキングスペース等の施設を整備して広く呼び込みを行いますが、対馬市の場合は違います。
    「離島をワーケーション先に選んでいただくのは少々ハードルが高いと考え、まずは対馬市が費用を負担して各企業をお招きするファムトリップ(モニターツアー)を実施しました。事前に企業側のニーズをヒアリングして、双方にとって意義のある取り組みになるよう企画しています」と永留さん。
    HOnProは福岡県内企業へファムトリップの説明を行い、対馬市との橋渡しを行います。「ワーケーションの制度化が難しく、導入する企業はまだ多くない中、HOnProさんには企業と対馬市の相性を見極めてマッチングしていただいています。まるで婚活アドバイザーのようですね」。
    そしてファムトリップ期間中、訪問企業とまちの関係者とのパイプ役を担うのが、一般社団法人daidaiの斉藤ももこさん。「彼女は地域おこし協力隊として移住し、現在は島内で複数の仕事をこなしながらまちづくりや観光分野にも携わっています。外の視点と市民目線の両方を持つ彼女には、市民からの信頼も厚いです」。

    美味を育む、豊かな自然

    永留さんが思う対馬の魅力の一つは豊かな海の資源。イカ、ブリ、ノドグロ、マグロ、アマダイ…とここでは言い尽くせない豊富な魚種は、日本一とも称されます。そのどれもが一級品ですが、島民にとってはあまりにも日常的なため、適正価格での商いが不得手です。「外から価値を見出していただき、生産者の所得を向上させたい。それが地域経済の安定化や担い手確保に直結、ひいては地域社会の維持にもつながります」。
    豊かな資源は山にもあります。縄文時代後期に大陸から日本へ伝来した蕎麦。その原種に近いとされる「対州(たいしゅう)そば」は、対馬の特産として食品のブランドを守る国の地理的表示(GI)保護制度に登録され、食味・風味に優れていると多くの食通を唸らせています。
    また離島である対馬には、日本で唯一ニホンミツバチのみが生息しています。特定の花に蜜源を絞るセイヨウミツバチと違い、四季折々に咲く花々から蜜を集めるのがニホンミツバチの習性。その大変貴重な「百花蜜(ひゃっかみつ)」の濃厚で芳醇な味わいは、一口で虜になるのだそうです。

    対馬にしかない宝がたくさんある

    古くから日本と大陸の交流点であった対馬ですが、明治維新以降、交流の旗振り役は中央政府の手に渡りました。また日清・日露戦争の折に島は要塞化し、太平洋戦争終戦までは自由な開発もできず、他地域と比べインフラの整備が遅れることとなりました。そのような背景から市民の中には「対馬には何もない」と感じる人も多いそうで、永留さんもその一人だったと言います。「島で生まれ育った私は都市部への憧れが強く、中学卒業後は島外の高校に進学、大学時代も東京で過ごしました。しかし大都市生活を送る中で次第に“対馬にしかない宝がたくさんある”ということに気付いたんです。こうした外の視点こそが対馬には必要なのだと。今はワーケーションを通して都市部の人々と対馬市民が交流することで相互の刺激となり、新たなイノベーションを生み出すきっかけになればと期待しています」。

    まとめ

    アクションアドベンチャーゲームで全世界から注目を浴びる中、地域の足もとに眠る魅力にスポットを当てながらワーケーション誘致を進める対馬市。新たなスタイルでPR戦略に力を入れる、同市の今後に期待が膨らみます。次回Vol.2では、より具体的にワーケーションをする方へ向けた情報をお届けします。お楽しみに!

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    HOnProマガジン編集部

    HOnProマガジン編集部は、それぞれ異なる個性や背景をもったメンバーから構成されています。さまざまな視点や角度から九州・沖縄の働き方と休み方の今を取材し、現場目線でフレッシュな情報を発信して参ります。