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  • 【イベントレポート】フルリモート勤務の企業が提案する「リゾートワーク」という働き方〜「QX[WORKLIFE]FES in 筑後」登壇団体ピックアップ_株式会社ヌーラボ〜

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  • 11月9日(水)、10日(木)に行われた「QX[WORKLIFE]FES in 筑後」では、地域企業・団体が進めるニューノーマルな働き方の実践事例を数多く紹介いただきました。新しい働き方を目指す多くの皆さんにとって、きっと貴重な学びになると考え、今回は特別に登壇いただいた中から2団体をピックアップしてご紹介します。まずは株式会社ヌーラボより安立様、吉田様の講演です。

    株式会社ヌーラボとは

    講演は、『テレワークを導入する企業が、わざわざ「リゾートワーク制度」を推進している理由』と題して進行しました。
    株式会社ヌーラボは「“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。」をブランドメッセージとする、コラボレーションツールメーカーです。具体的な提供サービスは4つ。①プロジェクト管理ツール「Backlog」 ②オンライン作画ツール「Cacoo」 ③ビジネスチャットツール「Typetalk」 ④これら3つのツールのセキュリティ強化を図る「Nulab Pass」です。

    QX[WORK LIFE]FES 2022年11月9日登壇資料『テレワークを導入する企業が、わざわざ「リゾートワーク制度」を推進している理由 』より

    自分たちが創り出したツールを自ら使い、その実体験を現在・将来の顧客に伝えることが大事と考える同社。しかしメッセージを発信している中の人が疲弊していたら、そのツールを使いたいと思えません。だからこそ従業員一人ひとりが元気に自らの力を最大限に発揮できるような環境作り、成長機会の提供に力を入れているそうです。

    働く環境として特徴的なのは、2020年8月に勤務地の条件を撤廃した点です。採用時の勤務地条件は「日本に住んでいること」で、2022年9月現在、メンバーは北海道から長崎まで17都道府県でフルリモートで勤務しています。またコアタイムなしのフレックスタイム制を導入。5〜22時の間、個人の裁量で始業・終業時刻を決められます。

    QX[WORK LIFE]FES 2022年11月9日登壇資料『テレワークを導入する企業が、わざわざ「リゾートワーク制度」を推進している理由 』より

    一見とても自由な働き方にみえますが、従来の「監視・管理・みんな一緒」から、「個性・才能を伸ばす」へとマネジメントの発想を転換することで、働きやすさが生まれるよう考えてあります。この2つのマネジメント要素はどちらも大切で、一方に偏るともう一方に影響があるため、このバランスをいかにとるかを気を付けているといいます。

    「リゾートワーク制度」の狙いとは?

    2018年6月より同社は、教育研修と福利厚生の要素を兼ね備えた「リゾートワーク制度」をスタートしました。北海道東川町・新潟県佐渡市・沖縄県宮古島市の3拠点から場所を選択でき、滞在期間も自由。同行する家族の人数に応じて手当の金額も変わります。参加条件は2つあり、現地で学校の先生になる研修プログラムを受けることと、体験後にレポートブログを執筆すること。家族には旅行の機会提供と合わせて講師として教える姿を見せられるという貴重な経験ができるため、家族連れでリゾートワークを実施する人も多いそうです。

    2021年新潟県佐渡市での”マーケティング”をテーマにした授業風景

    本制度の狙いはスキルアップと内省支援

    QX[WORK LIFE]FES 2022年11月9日登壇資料『テレワークを導入する企業が、わざわざ「リゾートワーク制度」を推進している理由 』より

    スキルアップでいうと、普段関わらない年代にどういう話し方や文脈なら伝わるのか、例えば大人向けの授業では理解度やITリテラシーの違いも踏まえ、みんなが満足できるプログラムを提供するためのファシリテーション能力が必要となります。
    内省支援も重要です。キーワードは「越境学習」。ホームとアウェイを行き来することで生まれる違和感や葛藤から新たな視点を得られるとされる理論です。事前準備に始まり、実際に先生として人前に立ち、ブログ執筆でアウトプットするまで社内外の多くの方と話し、これまで行ってきた仕事の経験談を言語化することで、改めて社会的意義や仕事への気持ちを振り返ることができます。また普段業務の中で使う言葉や習慣が、世間一般の当たり前ではないことに気付くきっかけにもなるといいます。

    こうした制度を作った背景には、同社の中途採用の比率が非常に高いことがあります。入社時すでに自分で力を発揮できる社員が入ってくるため、逆に言えば先輩社員が後輩に教える経験が積めません。どうにか体験型でマネジメント研修ができないかという観点から、今回の制度が生まれたのだそうです。
    気になる効果はというと、リゾートワーク制度を利用したメンバーとそれ以外のメンバーで比較すると、制度を利用したメンバーの離職率が低くなっており、少しずつ社員のエンゲージメントにも影響が出ているのでは、と期待を寄せます。

    新潟県佐渡市の加茂湖を見ながらテレワークする様子

    アイデンティティの在り方に合わせた制度設計が重要

    QX[WORK LIFE]FES 2022年11月9日登壇資料『テレワークを導入する企業が、わざわざ「リゾートワーク制度」を推進している理由 』より

    同社は、個人の中に占めている「会社人」というアイデンティティの割合が年々減ってきているのではないか、と考えています。かつては「会社人」と「家庭人」という二つのアイデンティティで生きる人が多かったでしょう。しかし現代は、複数のアイデンティティを使い分ける「分人」という考え方がポピュラーになってきているのではないか、つまり、会社にいる時だけ「マネジメント研修を受けてくれ」というよりも、その人の人生全体が豊かになるような研修プログラムを提供することが、エンゲージメントの向上に影響していくのではないかと考えているそうです。

    またアイデンティティが分人化していく一つのきっかけとして副業を行うことも挙げられますが、ヌーラボではこの副業も可能です。申請制度がまた独特で、本人が会社に副業希望を申請すると、反社会的な勢力に該当しない団体かどうかを会社が代行でチェック、また、雇用形態の確認を行う等、会社で副業契約をサポートしているのです。これも社員が多くの選択肢を持ち、個性・才能を伸ばしてもらうための制度だといいます。

    ワーケーションの目的を明確にすること

    リゾートワーク制度の設計においてヌーラボは、ワーケーションの目的を明確にすることを重視しました。フルリモート勤務の会社において、単なるワーケーションであれば促進する理由がないことから、教育研修を軸にすることでその目的を「社員の成長を促すこと」と設定。あるべき会社の姿を描き、その姿に近づくための施策として、制度設計した上で導入という順番でやることこそ、制度を定着させる上で重要。何より人材が大切だとされる現代において、人材を引きつける制度とその根本にある考え方次第で、人材が集まるか否かが変わってくるのではないかと感じているそうです。

    2019年沖縄県宮古島市での”人事”をテーマにした授業風景

    これからは、人を成長させる環境に投資できない会社は、採用活動において苦労する可能性があると同社は分析しています。
    企業に所属する意味をきちんと作り「この会社にいると人生が豊かになる」と感じてもらうことが重要で、ただし制度の導入は特効薬ではないということも注意すべき点として付け加えました。
    「ヌーラボの働き方を支えている各種ツールがあることで、場所や時間を選ばない働き方ができるようになることが大前提。この前提がないうちにただリゾートワーク制度の導入だけをしてしまうと、単なる旅行になってしまう。ベースになってる考え方が非常に大事なのです」と強調しました。これからも柔軟な働き方を取り入れ、地方都市・首都圏問わず働く選択肢を広げていくと、講演を締めくくりました。

    最後に

    オンライン開催での講演でしたが、「非常に興味深い内容だった」というコメントも数多く寄せられた取り組みでした。続く登壇団体ピックアップ②は、経団連様によるプレゼンテーションをご紹介します。こちらもぜひご覧ください。

    author
    HONPROmag編集部

    「HONPROmag」の運営会社 株式会社ホンプロのメンバーが編集部員となり、地方モデルによるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が溢れる社会実現を目指し、九州・沖縄エリアの自治体や企業の取り組み等をお届けします。