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  • 【鉄輪湯治シェアハウス「湯治ぐらし」】鉄輪から”湯治の文化”を広げる

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  • 大分県別府市の鉄輪(かんなわ)温泉で、湯治を暮らしに取り入れるプロジェクト型シェアハウス「湯治ぐらし」を運営する菅野さん。湯治をきっかけにこの町を訪れ、今やあらゆる人や企業と関係をつなぎながら、その魅力を発信しています。ご自身の人生を大きく変えた湯治との出会いから、今後さらに広げていきたいと語るワーケーションの取り組みまで聞きました。

    湯治ぐらし 代表の菅野さん

    湯治、そして鉄輪との運命の出会い

    大阪と上海、東京を拠点にトータル17年ほど会社員として働いていた菅野さん。業務に猛進する多忙な日々の中、自分のペースをなだらかにしてくれる存在として、温泉の虜になったと振り返ります。地方出張があれば温泉宿にパソコンを持ち込み、今でいうワーケーションを先取りする形で仕事。そんな折、東北で湯治の文化に出会います。「温泉宿や湯治宿に行っては、こんこんと湧く極上の湯に身を沈める。湯治は、疲れを手離しに行くという私が求める旅のスタイルそのものでした。西にも湯治場はないかなと検索すると、“てつりん”が出てきて」。それが、菅野さんと鉄輪(かんなわ)との出会いでした。そうして訪れた初めての鉄輪。あちらこちらから湯けむりが立つその景色に、菅野さんは強烈に惹かれます。道を歩けば「芋持っていき〜!」と見ず知らずの自分に声をかけられ、その声の主である女将さんたちがハツラツと仕事する姿にも衝撃を受けたそうです。「もう、一目惚れでした。ちょうどその頃は、時間に追われて忙しい毎日や、自分の時間をちゃんと取れないような働き方・生き方を変えたいと考えていたタイミングでした。ここに住みたい!って思ったんです(笑)」。それからわずか4カ月後の2019年3月に移住、鉄輪での暮らしがスタートしました。

    写真提供:湯治ぐらし

    「湯治ぐらし」オープン。現代にフィットする湯治を提案

    別府では決して特別なものではなく、暮らしに溶け込んだ温泉、そして湯治の魅力に惚れ込んでいった菅野さん。ですが、時代とともに湯治が廃れつつある現実を知ります。というのも、湯治は元来長期に逗留して湯の力で免疫を上げ、不調の改善を目指すものですが、西洋医学が発達した現代にその手法を選ぶ人は多くはないからです。大きな湯船でほんの短時間羽を伸ばし、身体を洗う場所としての温泉が主流になっていることを、「もったいない」と菅野さんは考えます。「日々を頑張っている現代人にこそ、宿で湯船に浸かり、体の声を聞きながら自由な過ごし方ができる湯治はフィットすると感じましたし、それを誰かが言わないとと思ったんです」。移住当初は会社員を辞め、フリーから起業準備。湯治の魅力を伝える場所として、シェアハウスを考案します。「私自身、起業準備をする中で、朝夕に入る温泉がいいスイッチになっていました。だからこそ、自分が経験しているこの素晴らしい暮らしを“湯治の暮らし“と名付け、皆さんにお裾分けできたらと考えました」。翌年の2020年2月、女性限定シェアハウス「湯治ぐらし1」をオープン。次いで温泉付きの「湯治ぐらし2」、男性向けの「湯治ぐらし3」をスタートさせます。入居条件は、湯治をライフスタイルに取り入れ、その魅力を実践したり、発信する思いがあること。「湯治は古くからある養生法ですが、現代に置き換えると自分の体と心をしっかり見つめ直すような、新しいライフスタイルともいえるんじゃないか。そう私なりに定義して、シェアハウスはその実践拠点としたのです」。そんなコンセプトを持つ「湯治ぐらし」には学生や若手社会人が集まり、今や全18部屋に15人の入居者が暮らしています。

    湯治ぐらし では、健康カウンセリングや食を通じた健康増進、ヨガを取り入れた様々なプログラムを行っている。(写真提供:湯治ぐらし)

    シェアハウスで、心身と向き合う暮らし

    菅野さんはシェアハウスで取り組むさまざまなプログラムを立案、シェアハウスの住民も日々温泉に浸かりながら、近隣の畑で農作業したり、育てた作物で料理をしたり、地域のさまざまな方と交流しながら、自分自身の心や体と向き合っています。また「湯治ぐらし」を一部屋企業契約し、社員のワーケーションや九州エリアの営業拠点として利用している例もあるそうです。そんなシェアハウス1棟目のオープンから1年ほど過ぎた頃、国を挙げてワーケーション等の「新たな旅のスタイル」推進が話題となりました。旅行事業者でもなく、コワーキングスペースの運営もしていない菅野さんでしたが、「やっていることをそのまま伝えてみよう」と、湯治ぐらしで実践してきたことをワーケーションのパッケージにまとめ、企業等へ提案することにしました。温泉で心身を整えながら働くワーケーションプランに反応は良く、中でも「みんなの保健室」というプログラムが好評を得ます。温泉は体質や体調、悩みによって合う泉質や入浴方法が異なります。このプログラムは、どの温泉にどう入浴すべきか指導者が湯治カウンセリングを行い、健康を目指すものでした。こうした試みが企業や大学の目に留まり、今もさまざまな形で関わりあっています。

    ワーケションで参加された企業向けに行ったプログラムの様子(写真提供:湯治ぐらし)

    企業に、暮らしから得た”湯治による疲れリリース&心身ブースト”をお裾分けしたい

    湯治ぐらしが実施したワーケーションプログラムの具体例を、2つ紹介してもらいました。一つは「湯治リトリートキャンプ」。自分の体をリトリート=扱い直す3泊4日のプランです。その中には先ほどの「みんなの保健室」のほか、体調に基づいた食事の提供などが組み込まれ、カウンセリングしながら心身を整えていきます。また地元住人を巻き込み、地域課題や企業の抱える課題についてディスカッションする時間もあったそうです。もう一つは「ライフワークイノベーション」。こちらは、別府の温泉は50年前の雨からできているというところに注目した合宿研修です。人生100年時代の折り返しの時期に、自分が生まれた頃に降っていた雨に温泉として抱かれながら、半世紀の棚卸しをし今後の人生を考えるもの。組織の役職者も多いため、自分のチームでの価値作りについてセッションするワークも組み込まれました。二例どちらも、別府ならではのプログラムです。「多くの企業さんに、湯治を活用した、仕事に向き合うための心身の整え直しや捉え直しにつながるワーケーションをぜひ体験いただきたい」と菅野さんは話します。

    湯治ぐらしの当時の入居メンバーたちと(写真提供:湯治ぐらし)

    湯治×ワーケーションの今後

    今後は、ワーケーションプログラムもより充実させていきたいと菅野さん。また企業や団体、個人が地域の暮らしをうまく活用しながらコラボレーションしたり、異分野・異業種との掛け算による新産業の開発・企画ができる拠点を構想し、来年秋、「湯治ぐらしフラッグシップ」のオープンを目指しているそうです。「地域共生、コミュニティ、自然や食、サスティナビリティ・・、温泉・湯治との掛け算で、さまざまな分野に特化したワーケーションや事業、産業が作れるはずです。それが結果、地域の課題を解決したり、私たちの暮らしを良くしていくことにつながれば」。その目には、温泉を中心に人々が交流し、あらゆるアイデアの輪が生まれる未来が想像できているようです。「湯治は可能性にあふれている。こんな掛け算もできるんだと、私自身、気付かされますから。今後も多くの企業に出会いたいですし、可能性を感じてもらいたいです」と展望を語っていただきました。

    株式会社HOnPro 山本(写真左)、湯治ぐらし 菅野さん(写真右)

    最後に

    「とにかく面白い人が集まってくれたらいいな」と話す菅野さんご本人が、この湯治ぐらしの活動を心から楽しんでいるのを感じました。そしてその姿こそが、年代問わず幅広い人々を惹きつけているようです。「こういう生き方もあるよ、こういう人たちがいるよと紹介する装置として、ワーケーションも湯治ぐらしもあったらいいな」と笑顔で話す姿がとても印象的でした。

    author
    HONPROmag編集部

    「HONPROmag」の運営会社 株式会社ホンプロのメンバーが編集部員となり、地方モデルによるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が溢れる社会実現を目指し、九州・沖縄エリアの自治体や企業の取り組み等をお届けします。