【イベントレポート】ワーケーション推進の入り口に立つ企業の後押しを〜「QX[WORKLIFE]FES in 筑後」登壇団体ピックアップ_一般社団法人日本経済団体連合会〜
WORKATION
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11月9日(水)、10日(木)に行われた「QX[WORKLIFE]FES in 筑後」では、さまざまな企業・団体がニューノーマルな働き方に関するプレゼンテーションを行いました。今回はその中から、ワーケーション推進を目指す企業にとって必須となる規程整備のフォーマットとして、「企業向けワーケーション導入ガイド」の作成を担当した、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、経団連)の大橋様による講演をご紹介します。
新しい働き方に挑む企業必見の規程・事例集
コロナ禍を背景に、時間や場所にとらわれない自律的な働き方を求める働き手が増えました。場所にとらわれない働き方の一つとしてテレワークが広がり、その延長線上にあるワーケーションにも注目が集まっています。現在、全国の自治体や観光事業者がワークスペースの整備や体制の強化に取り組み、新たな人の流れを受け入れる環境も整いつつあります。企業としてはこれから送り出していくタイミングですが、そこで必須となるのが社内規程を整えることではないでしょうか。
経団連のサイトでは、今なぜワーケーションが必要とされているのかという前提から、企業の実施事例、規程整備、地域や施設を選定する場合の考え方まで網羅した「企業向けワーケーション導入ガイド」をはじめ、労働時間や費用負担にも言及した「ワーケーションモデル規程」、また「地方自治体におけるワーケーション事業事例集」や「ワーケーション関連の商品・サービス事例集」を作成、掲載しています。
「ワーケーションモデル規程」はMicrosoft Word版データもダウンロードできるため、企業ごとに加筆・修正してオリジナルの規程を作成することが可能です。「入り口として規程をしっかりまとめておくことで、ワーケーションを推進しようと考えている企業の後押しをできれば」と大橋さんは語ります。
ワーケーションについての共通認識を得る
講演で詳しく説明された「企業向けワーケーション導入ガイド」については、「ワーケーションについての誤解を解消し、共通認識を作ること」がその作成目的だったそうです。ワーケーションという言葉を聞いて、一定数の人がバケーション=遊びをイメージしてしまうこともあり、誤解を避けるためにもあえて「実施事例」を「ワーケーション実施事例」としなかったという配慮も見られます。「ワーケーションが始まった当初は、海辺にトロピカルジュースが置いてあるイメージを使って説明したものが多く、企業の立場としても従業員を送り出すのが難しかったと思います。あくまでも働き方の一つであるとの認識に立つことが大事なのです」と強調しました。
コロナ禍で自宅や地域に滞在する時間が延びた分、人々は自分の暮らしと向き合う時間を多く持つようになりました。「生き方や働き方について自分自身で考えたい人が増え、働く場所もコロナ禍で劇的に変化したからこそ、ワーケーションが大きく注目されているのだろう」と大橋さん。ワーケーションは、いわば普段の職場や自宅とは異なる地域で滞在を楽しみながら仕事するテレワーク。その方が仕事がしやすい個人にとってその場所に行くことが目的であり、企業側から見れば地域貢献だったり社員がその土地にいることでメリットがあるから滞在させるという側面もある。つまりワーケーションをその地域に滞在する手段と考えると、考えを整理しやすいのではないか、と提案します。
「企業向けワーケーション導入ガイド」ではこうした「ワーケーションとは」という根本的な考え方や、ワーケーションを取り巻く背景を踏まえ、具体的に企業での実施事例についても紹介しています。中でも在宅勤務の延長線上として行っている事例や、企業型ワーケーションを実施している事例を紹介。ワーケーションと聞くとノマドワーカーやフリーランスがするものといったイメージを持たれるかもしれませんが、なるべく幅広い人にワーケーションに取り組んでもらえるようにしたいと、非常にドメスティックな企業を紹介しているとのこと。例えば製造業の化学会社の部長クラスがどんな体験をして、どう評価し、社内で浸透させようとしているかなどを知ることができます。
規程整備と、地域や施設選定の考え方
具体的なワーケーション導入へのルール整備は、次のステップを勧めました。
ステップ1、導入目的の明確化-エンゲージメント向上、健康増進、BCP対応など各社独自の目的を設定
ステップ2、働く場所の自由度の観点で自社のワーケーションスタイルを選択
ステップ3、選択したワーケーションスタイルの導入に向けて必要な規程を整備
まず導入目的を明確にし、次に自社のワーケーションスタイルを選択、そのワーケーションスタイルにするならこうした規程を整備した方が良い、という3段階でセットしていくことを勧めました。ステップ2に関しては、働く場所を誰が主体的に決めるかでワーケーションは大きく「企業型」「個人型」に分かれ、それによって行き先や規程整備の仕方も大きく変わると説明しました。
労務規程整備等のハードルが高いのではないかという懸念に対しては、ワーケーションは基本的にテレワークの運用規程と共通する部分が多いため、テレワーク導入済みの企業であれば新たに整理すべきことは多くないとのこと。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」も参考になるとのことです。
企業内の規程整備が一通りできたら、場所の選定に進みます。ここでは現地視察と外部資源の活用がポイントです。
ウェブサイトだけでなく、実際に現地で体験してみることでテレワーク環境や地域特有のコンテンツの確認ができ、安心・安全で有意義な実施が可能になります。視察で実感を持った上で導入することが大事で、「地方自治体におけるワーケーション事業事例集」にあるような政府や地方自治体のモデル事業を参考にしたり、「ワーケーション関連の商品・サービス事例集」でも紹介するような民間事業者によるサポートの活用も勧めました。
広がるワーケーションの可能性
「ワーケーションで生産性が高まった証拠はどこにあるのか」と懐疑的な質問を受けることもあると大橋さん。しかし一方で経験した人の満足度は高く、好きな地域で気分良く働くことが生産性向上に結びつくことを実感できるようだと言います。
働きがいの向上や健康増進のために、社員の好きな地域で働きたいという思いを後押ししていくのは、企業にとって大事な視点です。ただそれにとどまらず、関係人口として地域に関わることで、地域資源の保全や活用につながっていき、持続可能な地域社会ができていくといいます。
「企業向けワーケーション導入ガイド」の最後は、「ワーケーションは働き方改革の1つの施策にとどまらず、関係人口等の創出による持続可能な地域作りに効果をもたらす可能性を秘めている」と締めてあります。その言葉に重ねるように「ワーケーションは面白い」と話す大橋さんの熱の込もった講演でした。
最後に
企業でワーケーションの導入に興味はあるけれど取り組み方に迷っていた方は、まず第一歩目として経団連の公式サイトから「企業向けワーケーション導入ガイド」と検索してみてください。そしてモデル規程を使い、自社オリジナルのワーケーションガイド作成に踏み出してみてはいかがでしょうか。