【内閣府沖縄総合事務局】沖縄ワーケーションで実現するいちゃりばちょーでー
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リゾート地として絶大な人気を誇る沖縄。
「沖縄は余暇で訪れる場所」というイメージかもしれませんが、実は沖縄はワーケーションの受け入れを積極的に行っている自治体のひとつ。令和元年度末時点のサテライトオフィス開設数の調査で、沖縄は52箇所と全国でも第3位にランクインしました。
一方で、リゾート地としての魅力だけでワーケーション目的の企業を呼び込むことはできません。
ワーケーションの誘致にあたって、どんな工夫や課題があるのでしょうか。内閣府沖縄総合事務局の鶴見さんと鈴木さんにお話を聞きました。
“量”を追求する観光政策から、“質”を求める関係人口創出へ
2018年度にワーケーションのモニターツアーを実施したのが初めての取り組みでした。この頃はまだリモートワークが定着していませんでしたが、「環境のいい場所で仕事したい」という人が増えることを見据えて、沖縄がそれに適した場所であることをいち早く発信することが産業振興につながるのではないかと考えました。
当時の課題として、余暇的なイメージが強いためワーケーションを企業の制度として導入するのはまだ難しいこと、コワーキングスペースが少ない、ホテルのWi-Fiが弱いなどの環境の整備不足がありました。そこで、2020年度は施設整備と利用促進の施策を進めました。
ただ、コロナ拡大をきっかけに急激にテレワークが定着したことで、従来のただ仕事をリゾート地に持ち込む形だけではないワーケーションの可能性が見えてきたそうです。
どこで仕事をしてもいいのであれば、ロケーションや環境以外の付加価値が重要になります。訪れる側がその地域に何を求めるのか、受け入れ側はどんな人に来てもらって、どう地域課題の解決につながるのか。地域と都会の人をどうつなげるのか。
テレワークが当たり前になったことで、もともとは観光客の長期滞在がワーケーション誘致の目的だったところから関係人口の創出に目的が変化していきました。
「何人がワーケーション目的で沖縄に来たのかはよく聞かれることですが、人数が大事とは思っていません」と鶴見さんは話します。従来の沖縄の観光政策では1,000万人という”量”を求めてきましたが、結果的にオーバーツーリズムや依然として低い県民所得という課題も深刻でした。ワーケーションの盛り上がりをきっかけに、どれだけ関係人口の創出につながったかという”質”の追求に転換することが求められています。
ワーケーション誘致で用意すべきものは”箱”だけじゃない
沖縄県では、まず環境整備を進めました。もともとあった施設と新しく開設した施設を合わせると、今現在70から80ほどのコワーキングスペースなどのテレワーク関連施設があります。
ただ施設だけ作っても人が来ないことには意味がないため、利用促進のためのモニターツアーやセミナーを開催し、さまざまな企業に来てもらいました。
関係人口につながるヒントも多くあった一方で、多くの参加企業は「リフレッシュできてよかった」という感想を抱くだけで終わってしまっている印象でした。
「まず来てもらう」ことから、「来て何を体験してもらうのか」ということ、リソースのシェアリングやスキル・ノウハウの移転へと課題が移行したのです。
「ハードだけ作っても意味がないことがわかりました。ハードよりも大事なことは地域側がどのような受け入れをするかであり、その中心となる人材の発掘と支援が次の課題です」と鈴木さんは話します。
鍵となるのは、「この人に会いたい」と沖縄来訪の目的になり、地域と来訪者をつなぐ存在になるようなコミュニティマネジャーの存在。言うなれば、「昼間のスナックのママ」のような人です。
テレワークが当たり前になったことによってワーケーションの潮流の変化も早くなり、ただ箱を整備したり定型化したツアーを企画したりしても、すぐに陳腐化してしまいます。その時々のハード・ソフトのニーズを把握して柔軟に受け入れ体制をアップデートできる人材の育成と配置、コミュニティデザインが重要です。
沖縄県では、利用者向けにコワーキングスペースなどのワーケーション情報をまとめた「沖縄ワーケーションガイド」というサイトを運用しています。
「現状は施設の場所や設備などのハードの情報だけが載っていますが、ハード情報だけを見て『ここに行こう』というニーズは減っていると思います。今後は『ここに行けば面白そうな人にたくさん会える』というのが分かるようにしたいです」と鈴木さんは話します。
ワーケーション受け入れ側の連携強化のために
令和3年度は今までとは違った取り組みを行いました。それが「WORKCATION WEEK OKINAWA(ワーケーション ウィーク オキナワ)」。沖縄の事業者・自治体がひとつになって、ワーケーションに関わる県内事業・イベント・キャンペーンなどを2週間の間に集中して行いました。
今までのワーケーション誘致の課題として、さまざまな立場の人が各々の目的に沿って動いていたため、それぞれニーズが異なるワーケーション利用者を適切にナビゲートできないというものがありました。
例えば行政の中では、産業振興の担当課は、ワーケーションからIT企業の誘致や実証実験につなげたい、観光振興の担当課は余暇型のワーケーションで沖縄観光の長期滞在化につなげたい、といったように、「ワーケーション」という同じ言葉の範囲内でばらばらの動きをしていました。
一方で、ワーケーションに訪れる民間事業者の絶対数はそこまで多くありません。その状況でばらばらに施策を行っても、パイの取り合いになってしまいます。
「今は、パイを一緒になって作っていくフェーズ。情報発信をする上でも、各々が細々と発信をするよりもまとまって発信をしたほうがプレゼンスもより上がります」と鈴木さんは話します。
そこで、今までは各々でやっていたワーケーション施策を「WORKCATION WEEK OKINAWA」と称して相互に連携しながら行いました。
大小あわせて46ものイベントを期間中に開催して成功。今後ワーケーション関連施策を連携して行っていくための関係性を築けたことが大きな収穫となりました。
開催時期の直前まで緊急事態宣言が出ていたこともあり、集客数の面で課題はあったものの、来た人の中ではやはり「人に会いに来ている人」が多いことが分かったことも、今後の施策のためのヒントとなりました。
これからの沖縄のワーケーション
次年度以降は、ハードに限らずソフト面を中心とした地域の受け入れ態勢の強化を目指します。「昼間のスナックのママ」とも言えるコミュニティマネジャーの人材をまずは育成することが求められます。
そもそもワーケーションのあり方に関しても現状をアップデートすべきと鈴木さんは言います。観光庁では合宿型、地域課題解決型、サテライトオフィス型の3つにワーケーションを分類しそれぞれを並列で扱っていますが、これらは並列ではなく時系列で扱った方が理解しやすいです。ワーケーションで沖縄を訪れる入り口としては企業の合宿という最も手軽な手段をとり、コミュニティの中で地域への興味・関心を高め、そのあとサテライトオフィスの導入を検討するという流れがスムーズだからです。
だからこそ、まずはコミュニティデザインと関係人口の増加が重要です。
さらに、「ソフト面の受け入れ態勢の強化が必要なことにはみんな納得していますが、『何を求めてワーケーションに来るのか』を考えるともう一歩先を見る必要を感じています」と鈴木さんは話します。
産業を創造するために、コミュニティを形成し関係人口を増やす。だからこそ、併せて事業開発に関連する制度を、地域側が使いこなせるようになる必要があります。例えば、国家戦略特区や経産省が推進するプロジェクト単位の規制改革などが挙げられます。つまり、ワーケーションはあくまで入口であって、その先を見据えておく必要があるとお二人は言います。やるべきは、テレワーク環境だけでなく、事業が行いやすいソフト環境も整えること。そうすることで、企業にとっても沖縄は魅力的な場所になっていくでしょう。沖縄のワーケーションは、「ワーク×バケーション」から、既に次のステージに入っているようです。
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