【指宿市×屋久島町】高速船で1時間半!海をわたる魅惑の2拠点ワーケーション
WORKATION- SHARE
目次
世界的にも珍しい天然の砂むし温泉をはじめ、豊かな温泉を有する指宿。そして太古の森に多様な生命が息づく世界自然遺産の屋久島。鹿児島を代表する2大観光地が今、ともにワーケーション事業に取り組んでいます。それぞれを“極上の縁側”“究極の庭”と称し、2拠点を行き交うワーケター誘致に挑む現状を、指宿市観光課の横峯さん、屋久島町観光まちづくり課の宇都さんに聞きました。
移住定住への足がかりとしても重要なワーケーション施策
指宿市と屋久島町は、2012年2月に「指宿・屋久島広域観光推進協議会」を発足。両地域を結ぶ直行便の高速船に乗り、気軽に行き来する旅のスタイルを提案してきました。ワーケーションを軸としたプロモーションに乗り出したのは2020年のこと。コロナ禍で観光客が激減、従来のようなPRが困難となる中、リモートワーク人口増加も踏まえたアプローチとして、新しい旅のスタイルであるワーケーションに注目したといいます。指宿市の横峯さんが「世界に誇る自然を有する屋久島町との直行便があり、連携できることは非常に魅力的です」と言えば、「有名な温泉があり、鹿児島の中でもトップクラスの観光地である指宿市と連携できるのはありがたい」と屋久島町の宇都さんも返します。共通するのは、人の往来によって両地域を活性化するだけでなく、ファンを増やすことで長期滞在、ゆくゆくは移住定住につなげたい…という思いです。もとより両地域には、この地ならではの魅力に惹かれて移住する人も少なくありません。指宿市は温暖な気候や自然、食に魅力を感じて移住を決めたり、屋久島町へは山岳観光で訪れてリピーターになり、その後移住につながるパターンもあるとか。今後、そうしたケースをさらに増加させていくには、より深く地域を知ってもらうために、滞在時間を伸ばすことが重要です。そこで、一方の地域で集中して仕事したあとに海をわたり、もう一方の地域では雄大な自然に癒やされるという、両地域ならではの特色を生かした非日常型ワーケーションを提案しているのです。
ランディングページ、デジタルブックの意図
かくして2020年、ともにワーケーション施策のスタートを切った両地域。まずは事業者向けのオンラインセミナーやワークショップを通し、地域の中でワーケーションに対する機運を高めることから始めました。その後、ワーケターの滞在時間をより充実したものにするための情報発信として、2021年度にランディングページ(LP)とデジタルブックを制作。いつでもどこでも情報にアクセスできるよう、スマートフォンやタブレット端末にも対応した仕様で作られています。ワーケーションにおすすめの施設やWi-Fi情報も掲載し、ページから両地域の観光情報サイト(いぶすき観光ネット、屋久島観光協会サイト)へリンクして、宿や食、観光などの詳細情報は適宜更新されたものを入手できます。サイトを公開した今年4月から7月までのサイト訪問数は約1万アクセスとのこと。「期間中2カ月は、有料のGoogleディスプレイ広告を出しており、その効果もあると思います。なかでも、20代半ばから40代前半の男性によく見ていただいていることが分かりました。手探りで始めたLPですが、これを一つの足がかりとして今後のプロモーションにも生かしていきたい」と宇都さん。とはいえ、現時点であえてターゲットは絞っておらず、「ビビッと来た方に訪れてほしい。フリーランスのみならず、企業研修やチームビルディングなど、幅広く活用してもらえれば」と横峯さんは話します。
キーは、来訪者と地域の人のつながり
またLP、デジタルブックの中では、特に地元住民や移住者が街の魅力を伝えるコンテンツが目を引きます。その狙いはどこにあるのでしょうか。「昨年度、企画の協議を重ねる中で、何か特色のあるページにしたいねという話から、地域の人に注力した構成にしました。ここで紹介しているキーパーソンに実際に会いにきて交流していただけば、より充実したワーケーションになるはずです」と宇都さん。横峯さんも「ここに行けばこういう面白い人がいるよと、人と人をつないでくれる人が非常に多い」と地域の特色を分析します。ワーケーションを通して交流が深まるほどに地域の魅力を知ることにもつながります。「地元の人間は、地域にある資源があまりにも当たり前すぎて、その良さに気付けていない部分もあります。指宿でいえば、自宅で蛇口をひねれば温泉が出る地域もあり、我が家もそうです(笑)。そうしたことも、外から来た移住者の方に驚かれて初めて、普通じゃなかったんだと気付く」と横峯さん。会話を通してこうした発見ができることは、双方のメリットになるようです。
“縁側と庭”の近さで、別世界へトリップ
本ワーケーション施策においては、指宿市と屋久島町が“極上の縁側”“究極の庭”と称されているのも印象的です。あたたかい縁側のような指宿で、庭のように屋久島を楽しむという、斬新な切り口です。「直行便の高速船“トッピー”と“ロケット”を使えば75分ほど。意外とすぐ近くにあると伝えたかった」と宇都さん。「一方の地域で仕事をして、最終日にはもう一方の地域に行ってリフレッシュ。気軽に海をわたっていただきたい」。また横峯さんは施策に力を入れる理由として、指宿市で近年、日帰り旅行客が増えている課題を口にしました。新幹線開業や観光特急の開通など、公共交通手段が便利になることは非常に喜ばしい反面、宿泊せずに帰れるようになり、来訪者の滞在時間が減っているのです。だからこそこの2拠点を行き交うワーケーションが、来訪者が日を伸ばし滞在するきっかけになれば、と考えています。実際にワーケーションを検討する場合は、両地域ともにコワーキングスペースの数は十分にはないもののWi-Fi導入済みの宿もあるので、LPを参考にしてみてください。移動については屋久島では必須とも言えるレンタカーを早めに確保、指宿の場合はコンパクトに動くのであればレンタサイクルでも十分で、自然を満喫する計画ならレンタカーがあれば便利とのことです。両地域を仕事しつつゆっくり観光するならば、1週間はみておくといいでしょう。
2拠点ワーケーション、今後の展望
コロナ禍以降、観光客の激減と比例して事業者も疲弊、地域に元気がなくなっているとお二人。そんな中で図らずもリモートワークが浸透し始め、徐々に企業・個人ともにワーケーションを選択するようになってきた今後に期待を込めます。「まずは雄大な自然環境や温泉の恵みの中に身を置いて、両地域での仕事と余暇を楽しんでいただきたい。1日でも長く滞在していただき、いずれ移住定住先に選んでいただけたら…」と展望を語ってくれました。
最後に
「両地域とも特有のゆっくりとした時間の流れを感じると思います。そんな風土に癒やされながら、心身ともに健康で生き生きとお仕事してほしい」。取材中、そんな言葉も聞かれました。全く異なる環境に身を置いて仕事に取り組むことで、今まで見えなかった視点が発見できるかもしれません。また一人で全てを完結しようとせず、一歩踏み出して地域のキーマンとつながれば、ワーケーションはその場限りのものではない自分自身の居場所を探す起点にもなりそうです。高速船を使った魅惑の2拠点ワーケーション。ぜひ試してみませんか?
※この記事内容は公開日時点での情報です。