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戦略的債権回収 vol.1

COLUMN

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  • 債権回収とは何か?

    素晴らしい商品・サービスを作っても、その代金を回収できて初めて事業として成立するといえます。もし、代金を回収できなければ、商品・サービスを無料で配っているのと変わりません。

    様々な努力とアイデアで生み出した商品・サービスを事業として成立させるために、今回は債権回収のポイントについてお伝えいたします。

    債権回収のフロー

    まず、債権回収とは実際にどのような流れを辿っていくのか、その全体像を把握するために、債権回収のフローをお示しします。

    ①契約締結

    ②与信管理

    ③請求書・督促状・最後通告書の発送

    ④公正証書の作成

    ⑤財産調査

    ⑥仮差押え

    ⑦内容証明

    ⑧裁判

    ⑨執行

    各フェーズにおいて、債権回収の観点からのポイントがありますので、それぞれ見ていきたいと思います。

    フェーズ:契約締結

    債権回収とは売掛金等を回収する場面なのに、契約締結時点でポイントなんてあるの?と思われた方は要注意です。債権回収は契約締結の段階からすでに始まっています。

     >契約相手の信用性・選択

    まず、契約を結ぶ相手が本当に信用できるかどうかを審査する必要があります。特に初回の取引は注意をしましょう。信用に足りるかどうかは、サービス内容、実績、経営基盤がしっかりしているか、経営者や担当者がコンプライアンス責任を果たそうとする姿勢があるかどうかなどから判断しましょう。

     >契約書の作成は必須

    また契約書をきちんと作成することも大事です。特に、債権回収の観点からいうと契約書において担保権の設定を検討すべきでしょう。担保には一般的には以下のものがあります。

    ・物的担保(抵当権、譲渡担保権、質権)

    ・人的担保(保証人、連帯保証人)

    相手との力関係や相手の信用性なども考慮しつつ、代表者を連帯保証人にとっておく、代表者の自宅に抵当権を設定しておく、売り渡した商品に譲渡担保権を設定しておくなどの方策を採るべきかを検討すべきです。

    フェーズ:与信管理

    契約を結んだ後は、与信管理をする必要があります。支払いが遅れがちになってきた場合や、契約相手の経営が悪化したという噂を耳にした場合には、取引規模の縮小や取引の可否を検討する必要があります。

    相手の弁護士から債務整理に関する受任通知書が届いた場合には、すでに支払能力が乏しいことが明らかなので、取引は中止しましょう。

    また、相手が破産した場合には、相手が破産手続の申立てを行った裁判所から破産手続開始決定の通知や、債権調査票が送られてくることがあります。これらの書類が届いた場合には、すでに相手は支払不能の状態になり、破産手続を採っている状況です。

    フェーズ:請求・督促

     >請求書の発行

    一般的に、取引の際には請求書は発行すると思いますが、相手からの支払がない場合にはこれを漫然と繰り返し発行するだけでは効果的な回収につながりませんので、次のようなタイトル・内容で本気の姿勢を示して、実効的な回収につなげてください。

     >督促の仕方

    相手の支払いが滞った場合に、どう対応すべきか悩まれることもあるかと思いますが、相手の支払いが滞った場合には、メールや電話だけではなく、書面で督促をすべきです。

    そして、その書面のタイトルは「督促状」や「最後通告書」などといった履行を促すタイトルにしたうえで、「〇日までにお支払いがない場合には、弁護士に依頼し法的措置を採らせて頂く所存ですのでご承知おきください。」などの文言を入れておくべきでしょう。こちらが本気で回収する姿勢を見せなければ、なかなか支払ってもらえないからです。

    このタイミングくらいから弁護士に相談できるとより実効的な回収が可能になります。

     >書類の発送先(相手)の住所の調べ方

    また、最近では、LINEなどのSNSでしかやりとりがなく、請求書などを発送しようと思っても、相手の住所がわからないということもあると思います。

    その場合には、ご自身が債権者であることを疎明して、住民票を取得することができます(住民基本台帳法第12条の3第2項)。この手続を利用して、相手の住所を特定して請求書等を発送しましょう。

    ちなみに、疎明の手間などを考えると、弁護士に依頼をすることもあり得ます。

    弁護士は弁護士独自の権限(23条照会)でより柔軟かつ広範な調査が可能です。

    23条照会とは、弁護士法23条の2「弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。」という制度です。

    フェーズ:公正証書の作成

    では、相手が「払う」と言ってきた場合はどうすべきでしょうか。相手が「払う」と言っても安心してはいけません。残念ながら、口だけで支払わない人もいるからです。

    相手が「払う」と言ってきた場合には、相手の支払への本気度を確認するためにも、公正証書の作成を試みるべきです。

    公正証書とは、個人又は会社その他の法人からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。

    具体的には、相手との間で合意書案を作成し、それを公証役場に提出した後、公証人がその合意書案を公正証書という書面にまとめます。その後、相手と一緒に公証役場に赴き、合意内容を公証人のもとで確認し、それぞれ押印して完成です。

    公正証書を作成しておけば、費用や手間と時間のかかる裁判などをせずにいきなり強制執行ができます。つまり、相手が約束通りに支払わなかったときには預貯金口座の差押えなど強制執行をして、売掛金を回収することができます。そのため、相手が「払う」と言ってきた場合も油断せずに、公正証書まで作成しましょう。

    まとめ

    このフェーズ①~④は、各企業の担当者の方々におかれて対応可能なものであると思いますので、参考にしていただけると幸いです。フェーズ⑤以降は、「戦略的債権回収vol.2」にて、弁護士に依頼したときに、どんなことができるのかを併せてご紹介させて頂きたいと思います。

     

    author
    伊藤裕貴

    弁護士法人いかり法律事務所アソシエイト弁護士。

    民事・刑事を問わず幅広い分野でトラブルを解決している。特に、子どもの法律問題に注力し、いじめ、虐待、非行など豊富な実務経験を有する。

    趣味は、ゴルフ。現在は90切りを目指して日々鍛錬を積んでいる。

    監修
    弁護士法人いかり法律事務所

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