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有期労働契約における労働条件変更の課題 vol.1

COLUMN

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  • 新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、有期雇用労働者との契約更新の際に、労働条件の変更を行うケースが見受けられます。果たして、ここに法的な問題はないのでしょうか。

    有期労働契約における労働条件変更の問題点について

    例えば、シフト減少や賃金の減額などの有期雇用労働者の労働条件を変更する場合や、パート有期雇用労働法の同一労働同一賃金に対応するため正社員と有期雇用労働者との雇用区分を整理する場面において、労働条件を変更する機会が発生するものと思われます。

    しかし、労働者からすると、提示された労働条件に合意しないと契約が更新されないことから、やむを得ず承諾することもあるかもしれません。

    有期労働契約は期間満了ごとに条件面の交渉を含め更新手続を踏むことが予定されているため、その際の労働条件が従前と同一でなければならない訳ではないと一般的に解されています。
    一方で、このような労働条件変更の手法には次のような問題があります。
    すなわち、有期労働契約の期間満了時(更新時)に使用者が新たに提示した労働条件では労働者との合意に至らず、有期労働契約が終了する場合、“「雇止め」とみなされ、それが無効になる可能性があるのか”、それとも、“単に新契約の不成立であって「雇止め」とはならず、それが無効になることもないとするのか”という点です。

    なお、労働契約法第19条では、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められないとされており、この場合、従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになるとされています。

    有期労働契約における労働条件変更を裁判例から解説

    有期労働契約の労働条件変更に関する裁判例を見てみましょう。

    雇止めが無効とされた裁判例として、D社事件(東京地裁判決2010年3月30日)があります。この事件では、「労働者は労働条件変更に当たって、それがいかに不合理なものであっても、これに合意しなければ雇止めを受ける危険を負わざるを得ないが、このような結論は、不当であることが明らかである」として解雇権濫用法理を類推適用しその雇止めを無効としました。

    一方、K塾事件(最高裁判決2010年4月27日)では、非常勤講師との間で繰り返し更新されてきた1年期限の出講契約を予備校が締結しなかったことは、合意による契約不成立として雇止めとは評価されず解雇権濫用法理が適用されないとした一審判決を支持しました。また、予備校の対応は不法行為に当たらないともされました。なお、非常勤講師の雇止め事案に関しては、その他の裁判例においても、雇用継続への合理的期待が低いことを理由(講義のコマありきで毎年契約を締結するため)に解雇権濫用法理の類推適用に比較的慎重な姿勢をとる傾向が見られます。

    このように、反復更新された有期労働契約における労働条件の変更をめぐる法理の在り方については、未だ不明確な部分があり、今後も議論の余地があると考えます。

    労働条件変更手法のひとつ「変更解約告知」とは?

    労働条件を変更するひとつの手法に「変更解約告知」というものがあります。
    「変更解約告知」とは、大まかにいえば、「使用者が労働者に対して、労働契約の内容の変更ないし新契約の締結を求め、これに応じない場合には解雇する」旨の意思表示をすることであり、解雇と労働条件の変更を結びつけたものです。新たな労働条件による雇用契約締結の申込を伴った現在の雇用契約の解約告知(解雇の意思表示)のことで、労働条件変更のための解雇を意味します。変更解約告知は、解雇の一種ではありますが、労働条件変更を解雇という法的手段を通じて達成しようとする点で、雇用関係の終了自体を目的とする通常の解雇とは異なります。「変更解約告知」はS事件(東京地裁決定1995年4月13日)において初めて用いられました。しかし、日本では変更解約告知を認める法律上の根拠がありません。法的にどのように捉えるかについては裁判例・学説の立場は分かれています。「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会報告書」(厚生労働省)で立法化について議論もなされましたが労働契約法への導入は果たされていません。(vol.2へ続く)

    author
    馬場 美海

    特定社会保険労務士

    労働基準監督署にて時間外休日労働協定指導員、石綿届出等点検指導員を経て、2019年アドバンスに入職後、現在に至る。
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