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  • 【福岡市】”よく働き、よく遊ぼう”が、福岡型ワーケーションの合言葉『九州・沖縄の取組み事例vol.12』

    CASE

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  • 九州の玄関口として多くの人が行き交う街・福岡市。昨年2月に本格始動したワーケーション施策への取り組みの背景や、今年7月より運用を開始した「ワフパス」の開発経緯、今後の展望まで、福岡市経済観光文化局・観光コンベンション部・観光産業課の横山さんに聞きました。

    福岡市経済観光文化局 観光コンベンション部 観光産業課 横山さん

    本格的な取り組みのきっかけはコロナ禍

    福岡の中心地にあるホテルの1つ、ホテルJALシティ福岡 天神。今回はこちらにてお話を伺いました。

    福岡は、ビジネスや観光を目的とした方が多く訪れる街です。市内の宿泊所は常に7〜8割の稼働率を維持していましたが、横山さんによるとコロナ禍以降、最も悪い時には1割以下に落ち込むような状況になっていたそうです。「かねてより福岡には、多くの方が訪れる一方で滞在日数が短いという課題がありました。空港が都市部至近にある利便性の良さゆえですが、厳しい現状を突きつけられ、これまでのような誘客施策では立ちゆかなくなる…と危機感がありました。また今後は、リモートワークなど働き方の過渡期を迎えた社会にも柔軟に対応していかねばなりません」。

    市内に少しでも長く滞在してもらうにはどうすればいいのかと模索する中で、ビジネス訪問を強みとする福岡の特性と、ビジネスと観光をともに楽しむワーケーションの考え方は合致すると思い至ったそうです。2020年の夏頃には課内で考案を始め、予算が下りた2021年2月、ワーケーション施策に本格的に舵を切りました。

    ホテルJALシティ福岡 天神の客室

    ワーケーション施策の第一歩

    ワーケーションの推進に取り組むと言っても、何から始めるべきかと悩む自治体は少なくないかもしれません。福岡市の場合、「共に取り組んでくれる仲間を探すこと」がその第一歩でした。官と民を繋ぐ役割を果たしている福岡観光コンベンションビューローが事務局を担い、市内の事業者にパートナー募集の声かけを開始。まずは市内の事業者に声かけをし、パートナーを募集。「最初は、ニーズがあるの?そもそもワーケーションって何?というところから始まりましたが、とりあえずやってみようと前向きな反応をいただき、非常にありがたかったです」と横山さん。そしてワーケーション専用ポータルサイト「W@F(ワフ)」を作成。提携する11の旅行会社に27のモデルプランを企画してもらい、掲載しました。

    福岡のワーケーション専用ポータルサイト「W@F(ワフ)」

    移動と宿泊、観光、ワークスペースを指定したパッケージ商品です。緊急事態宣言の発出もあり販売期間は短かったものの、利用者からは「都市部と郊外部の近さに驚いた」という感想や、「これまで知らなかったエリアに足を運ぶことができた」といった良い反応が得られたそうです。「福岡に何度も訪れている方でも、行くのは都市部のみで郊外に足を運んだことがない方は多くいらっしゃいます。取り組みを通して、3泊以上という長期滞在であっても、アンケート回答者の9割以上が満足という回答をいただくことができ、福岡でのワーケーションのポテンシャルを感じることができました」。

    滞在をもっと楽しく、便利にできる「ワフパス」とは?

    2021年度のこうした取り組みには手応えがあった一方、見えてきたこともあったそうです。それは、「ビジネス中心で動く方は早期に旅行行程を組むことが難しい」ということでした。その場その場で計画するような自由度の高い旅へのニーズが大きいことを踏まえ、2022年7月、旅ナカで使えるお得な特典を提供するウェブアプリケーション「ワーケーションフレンドリーパス=ワフパス」をリリース。移動、宿泊、観光、ワークスペースそれぞれの特典を幅広く掲載し、その中から利用者自身が自由に選択できるようにしました。

    市内の提携拠点でワフパスの二次元バーコードを読み取る

    福岡に滞在する利用者は、まずワフパスに会員登録し、福岡滞在の際に市内の宿泊所名と滞在日程を入力。パスポートが発行されたら、市内の提携拠点で二次元バーコードを読み取り、各特典が受けられます。宿泊所はホテルだけでなく、福岡市内にある全てのゲストハウスや民泊も対象。登録に際して氏名、居住都道府県、業種の入力が必要ですが、会員登録料も無料です。事務局は入力された属性情報や利用実績をもとにユーザーの動きを掴み、マーケティングに生かしていきたいと考えているそうです。

    ウェブアプリケーションのためアプリのダウンロードが必要なく、福岡市民でも利用が可能、かつ事前予約がいらないコンテンツも多いため、非常に利用価値は高いと感じます。まだスタートしたばかりのサービスですが、今後認知が広がっていくことを期待します。

    ホテルのカフェラウンジにて。特典のコーヒーでリラックスタイム

    福岡でワーケーションするメリット

    多くの都市がワーケーションに取り組み始めた今、改めて福岡を滞在先に選ぶメリットはどこにあるのでしょうか。「福岡市のいちばんの特徴は、都市部と自然豊かな郊外が非常に近い環境です。仕事が終わった後すぐに遊びに行けたり、オンオフの切り替えがしやすいのは大きな魅力ではないでしょうか。ビジネスの視点でいえば、スタートアップの振興にも力を入れている街なので、起業したい企業を迎える素地もあります。本事業で委託しているワーケ―ションコーディネーターに企業を紹介してもらえば、ビジネス発展にもつなげられるでしょう。地域と一緒に成長していきたいと思う企業にとってはメリットがあるのではないかと思います。

    またこれは利用者の方に言われて気付かされたことですが、福岡は何かしようとした時に、選択肢の幅が広いんですね。仕事をする場所、お茶を飲みながら一息つく所、隙間時間に観光する場所、土地の美味しいもの…全てある。夜まで開いている店も多いですから、飽きることがありません」。福岡市のワーケーションの合言葉は「Work Hard,Play More Hard」、まさに仕事も遊びも全力で楽しめる街を目指しているとのことですが、確かにその要素は十分にあると感じます。

    福岡型ワーケーションの今後

    福岡市のワーケーション施策には、本年度時点で170以上もの企業が参画しているそうです。「約1年半という短期間でなぜここまで形にできたのか」と、しばしば聞かれるという横山さんは、こう分析します。「選択肢の話ともつながりますが、福岡の場合、資源はすでに揃っており、あとはその切り口を変えて見せていくだけでした。なので比較的スピーディに構築ができたのではないでしょうか」。そしてこう続けます。「来訪者には、まずはビジネスや観光で福岡を知っていただき、その延長線上として、移住や企業の誘致に広がっていくといいなと。私たちは、この先ワーケーションはごく当たり前の働き方になると考えていますし、日常になればなるほど移住や企業誘致にもつながっていくはず。だからこそ、こうした働き方が普通の社会になっていくように国や企業の皆様と一緒に推進していきたい。海外にはデジタルノマドと呼ばれる方も多いですから、今後はさらに視野を広げ、観光はもとよりビジネス的価値を感じて長期滞在していただける方が増えるよう取り組んでいきたいと思います」。

    最後に

    「ワーケーションを通して生まれる人と人、企業と企業との出会いに非常に価値を感じているんです。それはワーケーション施策に関わったことで、多くの自治体や企業の方々との関係が深まった実体験からですね。ワーケーションには大きな可能性があります」。力強い横山さんの言葉に、取材陣一同深く頷きました。ワーケーションでの出会いをきっかけに、企業同士のコラボレーションや新たなビジネスイノベーションの創出ができる…そんな未来も遠くないと感じます。観光にとどまらずビジネスの可能性にも満ち、今後の発展に目が離せない福岡市で、まずは一度ニューノーマルな働き方を実践してみてはいかがでしょうか。

    author
    HONPROmag編集部

    「HONPROmag」の運営会社 株式会社ホンプロのメンバーが編集部員となり、地方モデルによるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が溢れる社会実現を目指し、九州・沖縄エリアの自治体や企業の取り組み等をお届けします。