【イベントレポート】全員本気の「日向ワーケーション」、その実態とは?
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2023年10月12日(木)、福岡市中央区の社会保険労務士法人アドバンスセミナールームにて、日向市のワーケーションPRイベント「魅惑の日向ワーケーション 地元交流&波と山~全てに手が届く魅力のパラダイス~」を実施しました。主催は日向(ひゅうが)市ワーケーション推進会議、日向市。企画運営を株式会社ホンプロが行いました。イベント当日の様子をレポートします。
日向市の紹介~ワーケーション事例紹介
はじめに、日向市商工観光部の米谷(よねや)さんより、日向市の概要とワーケーションの取り組みが紹介されました。
宮崎県日向市は、福岡市と同等の面積を持ちながら人口5万7000人と人口密度が低く、ゆったりと暮らせる街です。2018年には快晴日数全国1位を記録、平均気温は17.8度と一年を通して温暖な気候です。日本の渚100選に選ばれるお倉ヶ浜をはじめ、海岸線にはサーフスポットが点在、サーフィンの聖地の名を築き上げています。2016年に開始した「リラックス・サーフタウン日向」プロジェクトは、このサーフィンをきっかけに他の地域資源の認知度とブランド価値向上を図る取り組みで、国内外に向けてPRを行いました。
ワーケーション施策が本格化したのは2020年。民間企業と業務委託契約を締結し、東京都市圏のPCワーカー向けの実証実験を企画すると、定員12名に対し100名を超える応募が殺到し、市の認知度も一躍向上。その後も研修型ワーケーションや親子ワーケーションなど様々に挑戦を重ねてきました。
そうした取り組みの結果、2020年からの3年間で約80社の企業ワーケーションを誘致、2022年度には延べ700名以上がワーケーションで訪れるまでに。観光庁の「ワーケーション推進事業」やワーケーション自治体協議会・総務省主催の「ワーケーション・コレクティブインパクト2022」など、国のモデル地域にも選定されました。現在、全国でも先進事例と位置づけられる日向ワーケーションのさらなる高付加価値化に向け、取り組みを強化しています。
「ワーケーションによる関係人口の拡大を通して企業誘致や移住・多拠点居住へつなげ、“若者と女性に選ばれるまち日向”を実現していきたい」と決意を述べました。
日向市ワーケーションの地元受入側の声
日向市には市内の宿泊施設や漁業関係者、商工会、観光協会、行政などおよそ20の企業や団体からなる「日向市ワーケーション推進会議」があります。当日は推進会メンバー9名が来場し、代表して松木さん(本業はイタリアンレストランのオーナーシェフ)がマイクを持ちました。
2020年度より、関係者の間でワーケーション受け入れの体制は整ってきていましたが、「来訪者のニーズが把握できていない」ことが課題だったそう。そんな中、2023年度に入り日向市ワーケーション推進会議が発足。メンバーで議論を重ね辿り着いた答えは、「通常の業務環境では養いにくい、社会で生き抜くために必要なスキルを自分で見出せるツールであること」が日向ワーケーションではないかということでした。そこで、体験アクティビティ別に「成長効果レーダーチャート」を作成。企業はこのチャートを用いて、ワーケーションの目的に合わせたプログラムのカスタマイズが可能になったとのことです。
「一般的には、行政から民間の調整役(ハブ)にこんなことをやってほしいと要請がきて、そこから受け入れ機関である宿泊施設やアクティビティ関係者に依頼をする…というのがワーケーションの組織図です。対して我々は、ワーケーションに関わる民間事業者全員が推進会議メンバー。お互いの立場を理解しながら、それぞれの視点で意見を出し合い、着地点を見出す。全員で一つのワーケーションを作っていることが一番の強みです」。
利用者にとって心の拠り所、第二の故郷と思えるような場所が作りたいというのが推進メンバーの中に一致した思い。「ぜひ一度日向でワーケーションを体験いただいて、人の良さに触れていただければ」とメッセージを送りました。
日向市ワーケーションの経験者の声
続いて、実際に日向市ワーケーションを体験したマージシステム株式会社代表取締役の塘(つつみ)さんが登壇しました。
福岡市に本社を置く同社は、ITインフラやシステム開発、WEB制作、研究などを行う企業です。ワーケーションを取り入れることが従業員の幸せに寄与するのではないかという思いから、昨年11月、日向市の「ワーケーション・コレクティブインパクト2022」に参加。4日間のプログラムの一部を体験されました。
ワークショップでは森林組合員より「100年越しの森林経営」についてレクチャーを受け、後継者問題や地主の高齢化などの課題を共有。その場に集った初対面の参加者同士で、森林を守っていくためのアイデアソンを行いました。その後は木工体験を楽しみ、夜はジビエのバーベキューを堪能しながら自作のトーチに火を灯し、その明かりを囲んでお酒を飲み交わしたとのこと。
同行した従業員からは、「大自然の中で心身ともにリフレッシュできた」「異業種の方々と地域課題に取り組み、新しい価値観を知ることができた」「自身の通常業務も別の視点から見つめ直すいい機会になった」という感想が聞かれたそうです。
「日向市のワーケーションは多くの体験プログラムが用意されているし、地元住民の方々の受け入れる姿勢も素晴らしかった。そもそも宮崎県はサーフィンだけでなくスキー場や登山、景勝地と観光地としてのポテンシャルも高い。ぜひ皆さんもワーケーションをするなら日向市を第一候補にしてみてほしい」と会場に呼びかけました。
トークセッション
最後に、株式会社ホンプロ山本の進行で、ワーケーション参加企業の塘さん、日向市ワーケーション推進会議の松木さん、日向市商工観光部の新玉(しんたま)さんの三者によるトークセッションを行いました。
推進会議発足に至った経緯について松木さんは、「モニターの参加者が喜んでくれる姿を見て、日向を知ってもらうために良いことをしていると気付いた。行政は民間主導で任せてくれつつも道筋は示してくれ、かつバックアップもしっかりとスピード感を持って行ってくれる。そうしたところからだんだん我々のボルテージも上がっていき、チームワークができていった」と明かします。
市の思いとして新玉さんは、「役所をうまく使ってもらったほうがプロジェクトはうまく回るんじゃないかと思った。ただ、最初に思いが共有できているので、今では民間や行政といった枠はあまり関係なくなっている」と説明。
ワーケーションを通して地域課題を目の当たりにした塘さんは、「ソーシャルビジネスの観点で可能性を感じた。将来的には当社もそういった事業に足を踏み入れるかもしれない」と今後の可能性について言及しました。トークセッション後は、日向市原産の幻の柑橘“へべす”を使ったお酒とソフトドリンク、地鶏の炭火焼きなどをいただきながら、和やかなムードで来場者との交流タイムが進みました。
自治体だけでなく、民間の方々の取り組みに対する熱意、チームワークの強さがひしひしと伝わってくるプレゼンでした。人々が温かく、波風とともに独特な「日向時間」が流れるという日向市。皆さんもぜひ一度、ワーケーションで訪れてみてはいかがでしょうか。