【熊本県 天草広域本部】イルカ・焚き火・猫の島!?コンテンツの宝庫で絶景ワーケーション
WORKATION
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熊本県の南西部に位置する天草エリア。大きくは上島・下島に分かれ、その周辺を大小約120の島が囲んでいます。上天草市、天草市、苓北町の2市1町からなるこの地域のPRに取り組む熊本県天草広域本部(以下、当本部)では、2022年度からワーケーション施策を進めています。取り組みの背景や現状、今後の展望を総務部総務振興課の三隅さん、髙本さんに聞きました。
ワーケーション施策の背景
当本部として本格的にワーケーション施策に取り組み始めた背景には、大きく3つの要因があるといいます。
コロナ禍で観光需要が落ち込み、また人々の仕事環境を含む生活様式が変わったことから、今後は通常の観光客の回復だけでなく新たな客層を呼び込む必要性が生まれたこと。国の「デジタル田園都市国家構想推進交付金(旧テレワーク交付金)」を活用して、3市町がそれぞれ施設整備を進めていたこと。そして観光が主要産業ゆえに多様なアクティビティコンテンツが提供できる環境にあったこと。これらの条件が揃い、当本部として本格的にワーケーション施策を進める動きになりました。
従来、当本部内観光推進協議会では、各市町の観光協会と連携して様々なPR活動を行ってきました。その中で、天草エリアは宿泊客に占める他県民の割合として福岡県が断トツだったことから、福岡を主軸にプロモーションした方がいいのではないかとの声があったと三隅さんは振り返ります。「1つの自治体だけで施策を行うのは費用対効果的に難しいため、天草地域全体で福岡に売り込んでいきたいと。そうして2022年からは福岡のワーケターを呼び込むことを目標に定めました」。
主なターゲットは、ビジネス客や企業経営層。異業種交流などを通して地域活性化に繋がればと期待しているそうです。「上天草の前島エリアには一泊5〜10万ほどする高級宿泊施設もあり、経営者層にも十分対応できると思っています」。
「天草ワーケーション活用ガイド」とは?
2022年は、「天草ワーケーション活用ガイド」作成にも着手しました。天草の概要やアクティビティ、コワーキングスペース、宿泊施設、モデルコース、お試し移住施設、移住支援金、アクセス情報などをくまなく盛り込み、ワーケターだけではなく観光客や移住検討者にとっても有益な内容です。情報は現在も更新中のため、最新データを3市町と共有し、各市町の担当者がプリントアウトして案内に活用していますが、未だ整備中のワーケーション施設や、増加傾向にあるWi-Fi付宿泊施設などを整理した上で、2023年度には冊子として配布予定だそうです。
ここで「天草ワーケーション活用ガイド」の中身を一部、ご紹介します。
まずは気になるワーケーション施設について。天草市では既存の空き店舗を改築して整備した施設が2カ所あり、他にも民間企業と共同で大規模な施設を新設中だそう。苓北町では富岡城の一角にサテライトオフィスを整備中で、今年4月にオープン予定です。上天草市の弓ヶ浜にも企業研修での活用に適した施設が整備中とのことです。
この他、三隅さんが注目するのは、上天草と南島原市との間に浮かぶ湯島。長崎と天草の間に浮かぶ、一周4kmの小さな島です。2020年にオープンした交流施設は海のすぐ目の前。定期船が一日5往復しか出ていませんが、それを逆手にとり、詰め込みで企業研修や企画を行うのに最適です。島の外周には堤防もなく、開けた景色に感動される方も多いそう。「何もない。でも猫がたくさんいて私のような猫好きにはお勧めです(笑)」。会議に行き詰まったら広い海を眺め、猫を愛でながらリフレッシュ。そんなワーケーションはいかがでしょうか。
春夏秋冬、見どころに富む天草の魅力
「天草ワーケーション活用ガイド」では、アクティビティに関するコンテンツも紹介されています。
お二人のお勧めはイルカウォッチングと焚き火。
実は天草海域にはおよそ200頭ものイルカが生息。五和(いつわ)町にあるイルカセンターからは、時期によっては海の上を飛び跳ねる姿が見えるのだとか。より近くで見たい方は、数社が出航している船上ツアーをぜひ。往復約1時間のクルージング中、イルカ遭遇率は驚異の98%超え(!)とのこと。時には船の下を並走することもあるそうです。
また天草には数カ所焚き火を楽しめるエリアがあります。空港から車で15分ほどの本渡海水浴場(茂木根海水浴場)では、事前申請することでBBQや焚き火が可能です。また苓北町にある白岩崎キャンプ場は海岸を見下ろすロケーションで焚き火ができ、地域で出た端材も使い放題という贅沢仕様。首都圏の人が焚き火をしにわざわざ訪れることもあるそうです。
他にも、春先や秋口はサイクリングに最適です。上島、下島それぞれに1周コースがあるので、近隣で仕事をした後にレンタサイクルで気分転換というのもいいでしょう。
夏は島らしく、海でSUPやカヤックを十分に満喫したいところ。季節問わず釣り客にも人気で、イルカが餌にするイカもよく釣れるそうです。
空気の澄んだ冬は、西海岸に沈む夕日がいちばん綺麗に見える季節。寒い早朝は崎津地区の水面に気嵐(けあらし)のもやが幻想的に漂い、カメラマンをも惹きつける絶景です。景色を楽しむなら登山も。天草には登山向けに整備された低山が多くあり、海を見ながら歩くことができます。低山の利点は冬でも雪が積もらず暖かいところ。焚き火と合わせて冬登山を楽しむというのも特別感がありそうです。
またグルメは、ウニや車エビ、牡蠣など季節を通して海の幸に恵まれるだけでなく、鶏、豚、牛それぞれ地域のブランドがあります。「仕事が忙しく思うほど観光ができなかったとしても、食の面で楽しんでいただけるのではないでしょうか」。
コンテンツは十分。今後は切り口が課題
天草エリアはかなり広く、上島・下島でそれぞれ3泊4日は必要。「見所が多くバラエティに富んだワーケーションができますので、何度でも訪れてほしい」と三隅さんは言います。ただコンテンツが充実している一方で、PRには課題が残ります。「常時あっせん窓口やコーディネーターがいるわけではないので、その体系化が必要だと感じています。地域の魅力を各客層に向けてどう示していけるのか。今後の課題です」と語ってくださいました。
最後に、来島を検討される方へ耳寄り情報です。福岡からであれば飛行機で、天草空港からはレンタカーというのがベスト。髙本さんの一押しは、天草エアラインが企画する、飛行機と同じ青色をしたロードスターに乗れるレンタカーパックです。約30分の空の旅で海景色を楽しんだ後は、爽やかなオープンカーで島巡り。ワーケーション気分を否応無く盛り上げてくれるに違いありません。天草エアラインではワーケーション応援特別運賃を企画していることもあるので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
元々、天草地域では若者の流出が課題であり、施策を通して地域の魅力や活力をPRしたいというのも根底にある思いだそうです。ただ、地域としての魅力はすでに十分であり、現に県外からの移住者も一定数いるというのも頷けます。今後は、「天草ワーケーション活用ガイド」などの各種情報をフックに来島してもらい、魅力を発見してもらうことが移住定住につながると期待しています。