【住友商事九州株式会社】「web寺子屋制」で叶える組織全体のスキルアップ『九州・沖縄企業の取組み事例vol.8』
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日々の業務を回すだけではなく、社員個々人のスキルアップも図っていかないといけない・・・
採用だけでなく、教育、組織活性化など、組織に関する悩みは尽きませんよね。
今回は、「web寺子屋制度」という画期的な社内教育制度を始められた住友商事九州株式会社の児島さん、麓さんに、その内容や背景をお伺いしました。
組織全体のレベルアップにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
web寺子屋制度とは?
研修制度が用意されている会社は多いでしょう。しかし、「研修を100%活用できているか」と聞かれると、ドキッとしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「研修を受けたものの、知識が定着しない」「研修で習得した知識やスキルが社内で十分に共有されていない」などの課題はよくあるもの。そんな課題を解決する制度が、web寺子屋制度です。
web寺子屋制度とは、各社員がオンラインの研修を受け、研修を受けた人が今度はその内容を自分なりにまとめて社内でオンラインの勉強会を開くという制度です。
2021年4月から、住友商事九州株式会社独自の社内教育制度として始まりました。
会社が指定する2社の外部オンライン研修の中から、各社員は研修内容が自分自身の業務に関係があるかないかにかかわらず、興味のあるものを自由に受けることができます。研修は、1回2時間のものから数ヶ月に渡る長期のものまでさまざま。リアルタイムで受講するものもあります。
そこで学んだ内容は、30分〜1時間程度の発表に社員自身がまとめます。大事な部分をピックアップしてつなぎ合わせるも、印象に残った箇所だけをまとめるも、まとめ方は自由です。資料作成も社員自身で行います。そして、オンラインで参加を希望した他の社員を対象に発表とディスカッションをします。
研修受講は業務時間外に行いますが、研修受講以降のこれら一連の流れは全て業務時間内で行うほか、業務優先としてWeb寺子屋実施期間の制限はありません。また、研修にかかる費用は研修受講者の所属部署の経費ではなく、会社全体の経費として計上します。これは、社員の知識やスキルを会社全体の資産と考えているからだそう。
研修をただ聞くだけではいつの間にか忘れてしまう知識も、まとめ直して発表するアウトプットの機会があることによって定着度が格段に上がります。また、勉強会に参加する側としては、研修を受ける時間がなくても短時間で重要な部分だけをインプットすることができるというメリットがあります。
社員が自ら学び続ける文化をつくりたい
「そもそも会社が目指す姿は、九州・沖縄の地域の企業様に頼られつつ、住友商事本体からも頼られる存在というものです。そのために、現場力を強化したいという思いが強くあります。」と児島さんは話します。
また、「総合商社のビジネスモデル上、社員一人ひとりが常に学び続けること、一つの得意分野ではなく複数の得意分野を作ることが必要」ということは常に意識しており、DX化やSDGsなどの取り巻く環境変化への対応力も問われています。
そのような外部と内部双方の要因から、社員個々人が自ら学び続ける文化を醸成することが必要とされているのです。
社内教育が必要とされる中で、web寺子屋制度ができるきっかけとなったのが、2020年10月グループ会社と合同企画で実施したオンラインの管理職向けの研修でした。「対面でなくても、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って活発で自然なディスカッションができ、遠隔地であっても横連携が図れ、また参加者からも好評な研修だった。」と児島さんは話します。
この合同オンライン研修には、社長もオブザーバーとして参加していました。「インタラクティブであったことが研修の価値を高めていた、それに代わるセッションを社内で実施できないか―」社長の着想から、web寺子屋制度の構築が始まり3ヶ月ほどで社内リリースに至りました。
活発な議論を生むために
2021年4月にWeb寺子屋制度の研修受講が始まってから2ヶ月弱で初めての”web寺子屋”が社員によって開催されました。その後は月に2,3回のペースでweb寺子屋が開催されており、制度として社内でも好評であることがうかがえます。
とはいえ、運用上で感じる課題もあるそう。「寺子屋での発表準備の負担の重さや大勢の前で発表することへの抵抗感から、受講したい研修があったとしても受講を躊躇してしまう人もいる」と、運用を担当している麓さんは話します。
そこで、参加のハードルを下げるための工夫も行っています。寺子屋での発表内容や資料だけでなく、発表の対象者も自分で決められるというルールです。全社に向けて勉強会を開くというのは、勇気が必要。そこで、全社向け、部署向け、管理職向けといったように、「誰向けに発表するか」も選択できるようにしたそうです。
さらに、オンラインでは人数が増えれば増えるほどディスカッションが生まれづらいという課題感もあるなかで、発表対象を狭めることはその解決にもつながっているそうです。人数が多いとビデオオフの参加者が増え、発言へのハードルも上がってしまう中で、少人数であれば気兼ねなく発言ができ、質疑応答や議論も活発になることが多いそうです。
各社員の知見やスキルをオープンに共有しあう
制度が始まってから活発に”web寺子屋”が開催されていますが、実際にはどんな反響や効果があったのでしょうか。
社員からの反響としては、研修を受けて寺子屋の講師をする側、寺子屋に参加する側の双方からポジティブな感想が多く集まったそうです。
講師をする側からは、「発表をするために理解を深める必要があった」「受講する研修自体への姿勢が変わった」「発表後に得られる反省点や学びもあった」といった声が上がりました。人に教えるためには、まず自分自身が深く理解できている必要があります。さらに、発表して寺子から反応をもらうことで、研修を受けた時点ではなかった新たな気づきを得られるのです。
社内での効果として、「寺子屋のスキームがあることで、研修の共有に限らず、社内で知見を共有する場を作りやすくなったのではないか」と麓さんは話します。
web寺子屋は、会社が用意したオンライン研修の内容を発表する場としてだけでなく、社員自身がこれまで学んだ知見を共有する場として開催されることもあるそうです。例えば、住友商事本体からの出向社員が過去の勤務経験を踏まえて会社への提言をしたり、新卒1年目の社員が大学で学んだことを発表したりといった回もありました。
各社員が持つ知見がオープンになってきていると言えます。
web寺子屋制度の今後の展望
「とはいえ、まだ始めてから1年も経っておらず、定着したとは言い切れない。これからweb寺子屋制度を通して、学び続ける、議論を活発化する風土を根付かせていきたい」と麓さんは話します。今後は、研修内容の拡充を進め、グループ会社とも連携していき、実際のビジネスにもしっかり繋げていくことが目標です。
どの会社にも一定の研修制度はあるでしょう。そこに”ひと工夫”を加えるだけで、社員全体のスキルアップや社内コミュニケーションの活性化を実現できるということを実感できるお話でした。
※この記事内容は公開日時点での情報です。