【株式会社グルーヴノーツ】キャリアと子育ての両立を叶える「テックパーク」とは『九州・沖縄企業の取組み事例vol.4』
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働く親にとっては、仕事と子育ての両立は大きな課題です。子どもを安心して預けられて、そこで子どもが楽しく遊んだり学んだりできたら最高ですよね。そんな理想を叶えているのが、福岡・天神にある株式会社グルーヴノーツが運営するスクール「TECH PARK(テックパーク)」です。テックパークは、子どもたちがそれぞれの個性に合わせてテクノロジーを学ぶ場所としてつくられました。
テックパークの発起人である株式会社グルーヴノーツの佐々木さんは、「テックパークは、親としての自分が欲しかった場所」と語ります。今回は、佐々木さんにテックパークをつくった理由、大切にしている考え方から今後の展望までお話を伺いました。
子育てとキャリアの両立の難しさに直面
「キャリアを積んでいく中で、男性目線の社会に違和感があった」と佐々木さんは話します。佐々木さん自身、子育てをしながら働くワーキングマザーです。これまでのキャリアの中でも、出産、育児が自分自身の出世の妨げになっていると感じたり、子育てと仕事の両立について、たくさん悩んできました。今のようにヘルパーさんやシッターさんを気軽に頼るというわけにもいかず、「仕事も育児も家事も、全部自分が頑張らないと」と、追い込まれるような気持ちにもなったそうです。そんな社会に対して、様々な社会保障制度は存在すれど、子どもや健康などプライベートの細かい事情に対して、「自己責任」と言われているような疎外感や絶望感を感じてきました。
「だからこそ、会社では社員それぞれの不安をできるかぎり飲み込んであげたい」と佐々木さんは話します。佐々木さんが代表取締役会長を務める株式会社グルーヴノーツでは、「リモートワーク」や「ワーケーション」という言葉がメジャーになるよりも前から、社員が働く時間や場所を選べるようにしています。決められた仕事さえしっかりやっていれば、それぞれが育児の予定や自分の体調にあわせて勤務をしていいのです。
「人によって、プライベートでは様々な事情を抱えている。そんな一人一人を会社が管理しようとするよりも、それぞれ個人の事情にコミットしながらも自立して自由に働ける仕組みさえ会社がつくってあげれば、働く側は働きやすいし、会社も管理コストがかからない。社員が利用できるアフタースクールとしてテックパークを始めました」と佐々木さんは話します。
仕事をしながらでも安心して子どもを預けられたり、子どもの可能性を見つけて育てたりできる場を作ろうと佐々木さんが考えたのは、自分自身が子育てとキャリアの両立に悩んできたからこその自然な発想だったのです。
プログラミングが好きになった、幼少期の体験
「テックパークをつくったもうひとつの理由に、自分の幼少期の頃の体験があるんです」と佐々木さんは振り返ります。佐々木さんは、小学校5、6年の頃からプログラミングに興味があったそうです。もちろんプログラミングは当時の学校で教えられる内容ではなく、父の会社のエンジニアの方が教えてくれたそうです。
その経験を振り返ったときに、「学校だけ、家庭だけだとどうしても閉鎖的だけれども、それ以外の第三者と出会う環境があることで、子どもの可能性も広がるのでは」と考えました。だからこそ、「子ども自身の可能性を見つけること」をひとつのテーマにして、テックパークをつくったのです。
テックパークで大事にしていること
佐々木さんは、「テックパークでは子どもたちがとにかく楽しめるようにしている」と話します。なぜなら、楽しいと感じれば必然的に「また行きたい」と思うし、逆に少しでも嫌なことがあると、「もう行きたくない」と子ども自身が思ってしまうからです。子どもに「楽しい」「また行きたい」と感じてもらうために、現場のスタッフは細かいところまで工夫して子どもと接しているそうです。例えば、「これをしなさい」と課題を強制でやらせないことなど、子どもに何かを押し付けることはしないようにしています。
テックパークのもうひとつのテーマは、「学校や家庭では見つけづらい子ども自身の可能性を見つけること」です。学校教育とは違って、テックパークでは全員に対してひとつのカリキュラムや強制の課題があるわけではありません。一人一人の子どもの興味や関心にあわせて、プログラミング、アート、ものづくりなど、学校ではできないような学びを体験できるのです。
実際に、親からも自分の子どもの可能性をどう見つけて広げていったらいいか、子どもの「好き」をどう「得意」に育てたらいいかと相談されることがたまにあるそうです。例えば、子どもがゲームを好きだとして、家でゲームばかりしていたら親は叱ることもあるでしょう。しかし、その子の「ゲームが好き」という可能性を大切にすれば、その子はゲームを作る側に興味を持ち、ゲームを作るためのプログラミングを自ずと学び始めるかもしれません。そんな風に、子どもの可能性は案外日常の身近なところに眠っていて、その可能性をテックパークならではのアプローチで見つけて伸ばすことをテーマとしています。
テックパークの今後の展望
大人気のテックパーク。福岡・天神のオフラインの場で、アフタースクールやシーズンスクールを展開する他、オンラインスクールの展開も始めています。真剣に子どもの将来を考えている保護者や、新しいことに感度の高い保護者から特に支持されているそうです。
テックパークの今後の展望について、「お父さん、お母さんが、子どものせいで自分のキャリアを諦めなくてもいいような仕組みとして残したい。子育て支援をするというミッションのもと、テックパークの事業も拡大していきたい」と佐々木さんは話します。
テックパークのオンライン展開によって、ひとつの場所に来てもらわなくても、自宅などどこからでもプログラムを受けることができます。子どもは飲み込みが早く、PCでオンラインの授業を受ける方法や電波が不安定なときの対処法なども、一度教えたらすぐできるようになるそうです。
オンラインを活用することでより多くの人たちにテックパークのサービスを利用してもらえるようになるのはもちろんのこと、「都市部に行かないといい教育を受けたりいい仕事に就いたりできない」という既存の枠組みを壊すことにも繋がると佐々木さんは考えています。オンラインでテックパークの事業を拡大させることで、地方からの人口の流出を抑える一助にもなり得るのです。
編集後記
テックパークは、子育てとキャリアの両立が難しい社会に対し、佐々木さん自身が疑問を抱いたからこそ生まれました。「働きながら子育てをするワーキングマザーの一人として、わたし自身が欲しい場所としてつくった」と佐々木さんは話します。
そうしてできたものが、同じように仕事と子育ての両立に悩む親に支持され、ひいては社員が働きやすい環境づくりや、オンラインの事業拡大による地方の教育水準の向上にまで繋がっていく。テックパークの事業が拡大していくことで、子どもにとっても親にとってもより良い社会になっていく、そんな未来にも期待できそうです。
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