小規模自治体向けPR方法11選|時短&低予算の広報戦略
WORKATION
- SHARE

住民や地域外に自治体の魅力を発信し、イベント集客や関係人口の拡大につなげたい――
そう考えても、「人手も予算も限られている」「観光地でもないし、何をPRすればいいのか分からない」と悩む地方自治体の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、10万人以下の小規模自治体でも実践できる、低予算・時短のPR方法を幅広く紹介します。
「どんなPR方法があるのか知りたい」「他と違う新しい切り口で認知を広げたい」「リソースが足りない中で成果を出したい」…そんなお悩みに応える内容です。
自分たちに合ったPR戦略を見つけて、無理なく効果的な広報活動を始めましょう!
1. 自治体PR方法 11選
自治体のPR方法にはさまざまな手段があります。ここでは、代表的なPR手法と、それぞれの特徴について紹介していきます。
1-1.チラシ・ポスター
自治体の掲示板や公共施設、スーパー、地域商店など生活動線に沿った場所で配布・掲示される伝統的な手法。自治体ごとの特色をデザインに反映しやすく、情報量も調整しやすい。
高齢者やネット未利用層にも確実に届く。地元密着の告知や緊急性の高い情報(例:防災・防犯・イベント)に強い。回覧板との組み合わせや店舗連携で周知効果が期待できる。
印刷・配布コストがかかる。掲示期間や設置場所によっては十分な効果が得られない場合も。デザインが古いと手に取ってもらえないリスクも。
1-2.広報誌・ニュースレター
自治体が月1回〜季刊など定期発行できる。住民への全戸配布や学校、事業所、駅、病院などでも配布可能。長文記事やインタビュー、住民参加コーナーも充実できる。
公式発行物として信頼されやすい。写真やグラフ、コラムなど多様な情報発信ができ、アーカイブ性も高い。自治体の“顔”としてブランディングにも貢献できる。
制作コストや郵送費が課題。紙媒体離れ対策で電子版配信も増加傾向にある。読まれないリスクもあり、タイトルやレイアウトの工夫が重要。
1-3.SNS(X・Instagram・Youtubeなど)
スマホ1台でリアルタイム発信可能。写真・動画で“今”を伝えられる。公式アカウント運営や、自治体公認インフルエンサーの活用も増加中。
情報拡散力が高く、若年層や子育て世帯、関係人口にもリーチしやすい。無料で始められ、住民との双方向コミュニケーションも可能。
炎上・誤情報拡散リスク。ネガティブなコメントやクレーム対応も必要。企画性も求められ運用担当者のスキル・定期更新体制が必須となる。
1-4.イベント(祭り・体験型企画など)
住民や外部の人が“実際に参加して体験”できる。自治体単独・他団体協働・オンラインイベントなど多様化している。
体験による記憶・ファン化。SNS・メディアへの二次拡散も狙える。PRの現場で直接住民の声を聞ける機会にも。
企画準備・運営に人手とコストが必要。天候や感染症など外的要因の影響大。オンライン開催時は配信設備・集客の工夫も。
1-5.ふるさと納税プラットフォーム
全国の寄付者へ自治体の魅力や返礼品を発信できる。複数の寄付サイトに掲載する事例も。
資金確保とPRが同時にできる。返礼品に自治体のストーリー性や“人”を紐づけると差別化に。全国ニュースに取り上げられる事例も多数あり。
掲載や運営に手数料がかかる場合あり。返礼品の独自性や発送体制も整備が必要。選ばれるためには、競合自治体との差別化が課題となる。
1-6.クラウドファンディング
特定の目的や期間を設けて資金を募る方法です。ガバメントクラウドファンディング(自治体版CF)や民間プラットフォーム(CAMPFIREなど)を活用し、住民や地域外の支援者から広く共感を集めて資金を調達します。
プロジェクトごとに“ストーリー”や地域の想いを発信できPR効果が高い。SNSやメディアで話題になりやすく、地元外のファン獲得や参加型PRにつながる。ふるさと納税と異なり、返礼品が必須ではなく、寄付以外の「応援」も募りやすい。
目標金額や使い道を明確に示し、進捗や結果の発信も欠かせない。リサーチや計画、広報準備に手間がかかる場合がある。
ふるさと納税は制度として毎年利用でき、寄付の見返りに返礼品を受け取れる“地域応援型の恒常的仕組み”。クラウドファンディングは、目的や期間を限定した「プロジェクト単位」で実施し、「共感」を集めて資金を集める“期間限定の応援”が特徴。
1-7.メディア広告(新聞・TV・ラジオなど)
地域紙や地元テレビ、FMラジオなど媒体ごとに得意なターゲットあり。イベント前後で露出を組み合わせるケースも。
多くの住民・関係者への一斉告知が可能。信頼度・影響力も高い。自治体発信のニュースとして無料掲載を狙える場合も(パブリシティ)。
広告費が高め。数日間~数週間で露出が終了することが多い。効果測定が難しい場合があり、関係各所への承認が得にくいことも。
1-8.ホームページ・Webメディア
公式サイトはすべての情報の拠点。イベント告知、動画配信、電子申請ページとの連携も。
情報の蓄積・更新が容易。検索流入で住民・事業者・観光客等広く対応。スマホ対応やバリアフリー設計で幅広い利用者を獲得できる。
運用・保守・情報整理に工数がかかる。放置すると“古い情報”が拡散される恐れもある。
1-9.プレスリリース(Web含む)
自治体独自の新たな取り組み、社会性・公共性・オンリーワン性のある話題を、地元新聞社・テレビ局などに直接プレスリリース(資料・案内文書)を送る方法が最も効果的。最近はWebメディア配信サービス(PR TIMES等)も使われるが、地方の自治体では地元メディアに“顔が見える形”で情報提供することで、取り上げられる確率が大きく高まる。
広告費をかけずに、地元ニュースとしてテレビや新聞に掲載・放映されれば大きな反響が得られる。「自分達のまちで何か面白いことが始まっている」という空気が住民にも波及しやすい。特に、社会的意義や意外性のある話題、オンリーワン性が強い話題は地元メディアの関心を引きやすい。
送り先メディアごとに興味関心が異なるため、「どの番組・どの紙面で取り上げてもらいたいか」を意識してリリース文を作成・送付するのがポイント。直接電話やメールでフォローすることも効果的。Web配信サービスも併用すれば拡散力も強化できる。
1-10.役場サイネージ・交通広告
庁舎ロビーのデジタルサイネージ、地域バス・ゴミ収集車両のラッピング広告など。日常動線に溶け込む“生活密着”型PR。
住民・来庁者の目に自然に入る。エリア限定で高い到達率。公共スペースならではの信頼感も。
設置・ラッピングの初期費用や維持費。広告量や更新頻度の調整が必要。
1-11.PRグッズ(エコバッグ・ボールペン・カレンダー等)
イベント来場者や新成人、学校とのコラボ企画で配布されるオリジナルグッズ。日常で使える実用品が近年人気。
手に取った人が自然と自治体を“宣伝”してくれる。エコバッグやボールペンは長く使われるため訴求力が持続しやすい。カレンダーは家庭・職場で目に入りやすい。
デザインや品質次第で使われないリスクも。在庫管理や配布先のターゲット設計が重要。コスト管理にも注意が必要。
2.小規模自治体向けPR戦略
「人手も予算も十分に確保できない」「PR専門の担当者がいない」「住民の反応がいまひとつ」――
そんな悩みを抱える小規模自治体向けに、限られたリソースでも効果的に取り組めるPR戦略と、実践のポイントを解説します。
「忙しくてもムリなく続けたい」方におすすめの内容です。
2-1. PR業務の「時短」術
PR活動はどうしても「手間がかかる」「他の業務と兼務で後回しになる」となりがちです。
小規模自治体では、情報発信の負担を最小限に抑える「時短」の工夫が不可欠です。
-
- ルーティン化と担当制
毎週・毎月など「いつ・誰が・何を」発信するかスケジュール化することが大切です。
例:イベント案内は毎月1日、住民参加募集は月末、など。
-
- テンプレート活用
チラシやSNS投稿、広報誌記事などは“使い回せる雛形”をつくっておくことで制作時間を大幅削減できます。
-
- SNS予約投稿・自動化ツールの活用
主要SNSには予約投稿機能があり、前もってまとめて投稿作成→自動配信で効率化。有料ツール等での予約投稿も視野に入れる。
-
- 進捗の見える化
チェックリストや共有カレンダーで、関係者全員が「今どこまで進んでいるか」を一目で把握できる仕組みを作る。
2-2. 少リソースでも成果をだすコツ
小規模自治体では「人手も予算も限られているからムリ」と感じがちですが、工夫次第で少人数でも効果的なPRは可能です。
具体的な方法を解説していきます。
-
- 地域内の“力”を巻き込む
外部パートナー(地元クリエイター、学生、NPO、地域企業)と連携すれば、専門性や新しい視点を取り入れながら、職員の負担を減らせます。
例:地元高校の写真部がイベント撮影を担当、大学生がSNS運用のアドバイザーになる。
-
- 他部署や団体との協働
地域振興課・観光課・産業課・企画課・広報課・学校・町内会など「自治体内外の複数組織」で分担・連携すれば、ひとつの部署に業務が集中せず、より多様なPRが可能になります。
-
- 住民ボランティアの活用
「住民レポーター」「地域アンバサダー」「イベントサポーター」などを募集し、現場の声や写真を公式PRに活用。地域の当事者意識も高まります。
2-3. 外部人材を活用する/必要な部分だけ外注する
PRを“自前”でこなすのが難しい場合、部分的な外注や民間企業の力を借りることも有効な選択肢です。小規模自治体でも、費用やスケジュールのコントロール次第で外部リソースを上手に活用できます。
具体的な活用方法と合わせて注意点も紹介します。
-
- 必要な部分だけ外注する
全部を丸投げせず「企画案の作成だけ」「ディレクション業務の依頼だけ」「デザインや動画制作だけ」など、自分たちがおこなった場合にリソースが大きくかかる部分のみ人件費と照らし合わせてみて、外部に任せることでコストを削減できます。
また、人材選定には地元の企業や個人クリエイターを選ぶことで、地域性やストーリー性もだしやすく連携もしやすいメリットがあります。
-
- 見積もり・契約条件の確認を徹底
注意点としては、トラブル回避のため、発注範囲・納期・著作権の帰属などを事前に明確にすることです。費用対効果や庁内決裁ルールも確認しておきましょう。
外部人材をうまく使えば、限られた人数でも低コストでクオリティの高いPRが実現できます。
3. 観光地以外のPR成功法則
観光資源が少ない地域ほど、日常や住民の姿・人とのつながりといった”その地域ならでは”の個性やストーリーが強みになります。
ここでは、観光地でなくても実践できる効果的なPR手法と事例を紹介します。
3-1. 日常や“人”を主役にした情報発信
観光名所や特産品がなくても、日常の風景や暮らし、住民のリアルな声や人のストーリーそのものが、外部から見ると新鮮なコンテンツになります。
- SNSでは「#○○町の日常」「#○○町のひと」などのハッシュタグで発信し続ける
- 住民や職員が課題解決に取り組む様子を「私たちの挑戦」として写真や動画でストーリーとして定期発信
- 移住者(外部目線)からの移住体験レポートやUターン家族のドキュメンタリーの発信
3-2. “観光資源ゼロ”から話題になった実例
■愛媛県西予市「#それふつうやけん西予市」
- 東京から移住された担当者が外部目線も取り入れながら地域おこしをおこなう
- 西予市の「日常」が都会の“非日常”として響き、移住希望者や地域ファンを獲得
- 地域おこし協力隊が中心となり「#それふつうやけん西予市」をつけた写真をSNSに投稿し、暮らしをPR
■参考:FURUSATO
顔が見えるPRは、住民だけでなく地域外からの関心も引きやすいコンテンツとなります。
また、移住者などの外部目線も取り入れることにより、地元では見えない価値を“外からの視線”で発信することで新たな魅力の発見につながります。
4.小規模自治体向けの新PR戦略
限られた予算・人手で成果を出すには、一つ一つのPR手法を単独で考えるのではなく、「複数を組み合わせる=かけ合わせる」発想が大切です。
ここでは、実践しやすく、かつ効果の高い“掛け合わせ”の具体例を紹介します。
4-1. ふるさと納税×プレスリリースの連動
ふるさと納税サイトを単なる返礼品の場にせず、地域のストーリー発信の場として活用する事例です。
返礼品紹介だけでなく、生産者や住民のエピソードを丁寧に取材し、ホームページ・広報誌・SNSなど複数の媒体に掲載します。
それぞれ届くターゲット層が異なるため、まずは地元住民からの認知度を高めることができます。
さらに、「応援してくれた人へのお礼メッセージ動画」を制作したり、納税者限定の“地域体験イベント”を企画して提供することで、納税者との継続的な関係づくりも実現。
その取り組みを社会性の高いニュースとしてプレスリリースで発信することで、新聞やテレビなど地元メディアに取り上げられる可能性も広がります。
4-2. SNS発信×LINE・DM活用
SNSアカウントをただ運用するだけでなく、LINE公式アカウントやDM(ダイレクトメッセージ)を活用して双方向性・限定性を強化する掛け合わせです。
例えば、InstagramやX(旧Twitter)で関心を示してくれた人に対し、LINEで限定情報やアンケート、クーポンを配信したり、イベントのライブ配信URLを個別送信。「興味度が高い人だけ」に特別な体験を届けることで、PR効果が一層高まります。
また、アンケートや質問募集をLINEで実施すれば、よりリアルな住民の声を集めやすく、施策改善にも活かせます。
4-3. イベント×オンライン配信・アーカイブ
地域のイベントやワークショップを、現地開催と同時にオンライン配信・アーカイブ化することで、遠方の出身者や関係人口にもアプローチできます。
当日の様子をYouTubeやSNSライブで配信したり、ダイジェスト動画を後日ホームページやLINEで共有することで、現地に来られなかった人にも“体験”を届けることができます。
オンライン参加者限定の特典やチャット質問タイムを設けることで、参加者の満足度アップも図れます。
4-4. 地元企業・学校・NPO×自治体コラボPR
自治体単体では難しい企画も、地元の企業や学校、NPOとのコラボで実現できることが広がります。
たとえば、地元高校と協力して「地域食材を使ったオリジナルレシピコンテスト」を開催し、入賞レシピは地元企業と連携して実際に商品化・販売。
広報誌やホームページ、SNSでもそのストーリーや販売の様子を発信します。
また、商工会やNPOと一緒に「地元の味を伝えるレシピ小冊子」を制作し、住民や観光客に配布するなど、異なる視点やノウハウを融合させ、地域の魅力をPRする機会を増やすことが可能です。
まとめ
小規模自治体のPRは、「人手も予算も足りない」「観光地ではない」といった制約があるからこそ、工夫や掛け合わせが力を発揮します。
まずはチラシ・SNS・広報誌・ホームページ・プレスリリースなど、今回ご紹介した基本のPR手法を整理し、自分たちに合った方法を選ぶことが大切です。そのうえで、限られたリソースでも成果を出すために、テンプレートやツールの活用、地域内外の人や団体との連携を積極的に取り入れてみてください。
さらに、異なる手法や人材を組み合わせることで、単体では届かなかった層にも情報が広がりやすくなり、広報活動の継続性や効果も高まります。
継続的に取り組むことで、より効果的な施策も見つけやすくなり、成果につながる可能性が広がります。
ホンプロでは、九州地域の自治体様に向けてプロモーション戦略の立案や施策のご提案を行っています。特に、九州でのワーケーション導入に関するプロモーションには豊富な実績とノウハウがあります。
外部の専門家としてご相談をご希望の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。