成功事例6選からみる関係人口を増やす取り組みと施策づくりのコツ
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目次
地域活性化や定住促進を考える上で注目されている「関係人口」。
しかし、どうすれば関係人口を増やせるのか、具体的な取り組み事例や自分の地域での活かし方に悩む自治体担当者も多いはず。
本記事では「関係人口を増やす取り組み」に注目し、全国から選りすぐりの事例7選と、自分たちの地域ですぐに取り入れられるヒントをわかりやすく解説します。
1.関係人口の基礎知識
「関係人口」「定住人口」「交流人口」とは何か?まずはこの3つの人口の違いと定義を整理してみましょう。
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- 【交流人口】
地域外から通勤・通学・観光・レジャーなどで訪れる人々で、関わりは一時的です。
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- 【定住人口】
その地域に住所を持ち、生活の拠点を置いている住民です。
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- 【関係人口】
地域内にルーツがある人や、流動的に何度も足を運ぶ人、過去の勤務・居住などで地域に関りがある人など、地域外から関りを持つ方々です。
人口減少と高齢化が進む地方において、関係人口の存在は地域活性化の重要なカギとなっています。
2.関係人口を増やした取り組み事例6選
実際に関係人口を増やすには、どんな手法や工夫があるのでしょうか?全国各地で成果を上げている7つの特徴的な取り組みを、ご紹介します。
2-1.北海道石狩市「いしかりアグリ・マッチング創出実証事業」
都市部の人材が“関わりの濃さ”に応じて、石狩市の農業に多様な形でコミットできる関係人口創出プログラム。スマホアプリやリアル店舗、体験ツアー、長期滞在など、ライトからコアまで多層的な関わり方を用意し、農業の担い手確保と地域ファンづくりを同時に目指している。
「知る・味わう」から「訪問・体験」「暮らし・働く」まで、関わり方の段階ごとに受け皿を設けて“無理なく関係人口化”する仕組みを整備。スマホアプリによる継続的な情報発信や、現地での食体験イベント、高校・大学との連携など、多様な入口を作っている。
石狩バーチャルマーケット(ポケットマルシェ内)、石狩リアルマーケット(期間限定レストラン・アンテナショップ)、石狩ファームピクニック(収穫体験ツアー)、石狩アグリケーション(農作業×農村バケーション長期滞在プログラム)
石狩市(自治体)、石狩市農業協同組合、生産者、地域飲食店・販売店、高校・大学、古民家再生協会、地域NPO・地域企業など
2-2. 宮崎県五ヶ瀬町「地域課題でつながる関係者協働事業」
急速な人口減少に直面する中、五ヶ瀬町の中高一貫校・卒業生・大学生・NPO・地域住民が協働し、地域課題解決に挑む「関係人口」創出プロジェクト。政策提案コンテストやスタディツアー、実践活動を通して、多世代・多分野の人材が地域に持続的に関わる仕組みをつくっている。
政策提案コンテストによる「アイデア募集」と、優良提案の実践活動を連動。参加した高校生・卒業生・大学生が地域住民やNPOと直接協働し、実際に地域課題の解決を体験できる場を提供。ICTによるプラットフォーム構築で、継続的な交流・情報発信も実現している。
五ヶ瀬中等教育学校、NPO法人五ヶ瀬自然学校、政策提案コンテスト、オンライン研修・スタディツアー、実践活動、関係人口プラットフォーム(HP・SNS)
五ヶ瀬町(企画課・教育委員会)、NPO法人五ヶ瀬自然学校、五ヶ瀬中等教育学校、地元住民・団体、都市部大学、総務省地域力創造アドバイザー
2-3.高知県土佐町・須崎市・四万十町「デュアルスタートアップ創出プログラム」
都市部に暮らしながら、地方の地域資源や事業者と連携して新しい事業創出に取り組む“多拠点型起業”=デュアルスタートアップを推進。都市の人材・ノウハウと地方の資源・課題を掛け合わせ、双方の強みを活かしたビジネスモデルの創出を目指す。
大手企業社員向けの現地合宿型研修や、地域事業者と連携した事業開発プログラムなど、多様な入り口を用意。都市圏と地域がフラットに協力し合うチームづくりや、都市圏のマンパワー・発信力を地域課題解決に活かす点が特徴。
現地(高知県土佐町・須崎市・四万十町)での合宿研修、スタートアップイベント、成果報告会、オンラインマッチング、デュアルスタートアップ・ラボ(事業開発プログラム)、株式会社アルファドライブによるメンタリング
土佐町・須崎市・四万十町(自治体)、都市部人材・起業志望者、大手企業社員、地域事業者、株式会社アルファドライブ、現地住民
2-4.徳島県阿南市「阿南愛が紡ぐSUPタウン創造事業」
SUP(スタンドアップパドル)をきっかけに、地域内外の「海を愛する仲間たち」が集い、美しい海洋環境や河川を次世代に継承するための環境保全活動・地域交流を進めるプロジェクト。
SUP体験と連動した地域参加型の美化活動や、地元事業者との連携、創業支援など、多面的な関わりを用意している。
SUP体験を「交流人口→関係人口」への導線とし、ESCA(EARTH SHIP CREW ANAN)やESPA(EARTH SHIP PARTNER ANAN)といった仲間や事業者の認定制度で継続的なコミュニティを形成。
美化活動やイベント参加、特典サービス、ふるさと納税の仕組みなど、参加者のエンゲージメントを高める仕掛けが随所にある。
SUPタウンプロジェクト拠点(北の脇海岸、桑野川など)、阿南市版ふるさと納税、ESCA制度、創業支援相談窓口、阿南市版ふるさと納税との連動
阿南市(自治体)、ESCAメンバー、ESPA登録事業者、ローカルパドラー、地域住民、観光客、SUPインストラクター、商工会議所、金融機関
2-5.鹿児島県志布志市「志布志熱★上昇プロジェクト」
志布志市が好きな全ての人を“シブシンシ(志布志のひと)”として認定。ふるさと住民票をはじめ、名刺プレゼントや交流イベント、体験ツアーなど、多彩なメニューで市外・県外のファンとつながりを深める関係人口創出事業。
「ふるさと住民カード」「お名前入り名刺」の発行など、誰でも気軽に志布志市とのつながりを“見える化”し、リピーターや応援者の輪を広げている。交流イベントや体験ツアーで「訪れるきっかけ」を継続的に生み出し、参加者同士・地元住民とのネットワークを育成。
ふるさと住民カード(イラスト入り)、お名前入り名刺、ふるさと住民会議(交流イベント)、体験ツアー、特産品プレゼント企画、志布志市情報発信、ファンネットワークの構築
志布志市役所(企画政策課・港湾商工課)、志布志市観光特産品協会(東京駐在所・本所)、地域おこし協力隊、志布志市民、志布志ファン
2-6.埼玉県横瀬町「チャレンジで人と人とがつながるプロジェクト」
官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を軸に、企業・団体・個人など多様な主体のチャレンジを行政・地域が支援。地域課題解決や地方創生に関心の高い人が、町民や地域とリアルに交流しながら、実践的なプロジェクトを生み出している。コワーキングやイベント拠点「エリア898」も整備し、町内外の人のつながりを深めている。
アイデアやプロジェクトの応募から意思決定・実践までスピーディーな仕組みで、町外の人材が地域に何度も足を運ぶ好循環を創出。交流や実践を通して町への愛着やリピーターを増やし、メディア露出や来訪者の増加にもつなげている。
官民連携プラットフォーム「よこらぼ」、コワーキング&イベント拠点「エリア898」、プロジェクト審査会、各種体験・学び・交流プログラムなど。
横瀬町(まち経営課)、中間支援組織(任意団体)、よこらぼ提案者(企業・団体・個人)、町民、町外の地域づくり実践者
3.成功事例から学ぶ施策づくりのヒント
成功事例には、関係人口を増やすためのヒントが多数詰まっています。自分たちの地域で活用できるポイントを、5つの視点で整理します。
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- 教育・若者を活かす
五ヶ瀬町のように、学校・地元学生・卒業生を巻き込み、政策提案コンテストや実践活動を通じて“地域課題解決の担い手”を育てる仕組みづくりが有効です。
若い世代の柔軟な発想と行動力を生かすことで、地域に新しい視点や活力が生まれます。
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- 地域のファンを育てる
志布志市のふるさと住民票や、阿南市のSUPタウンのように、イベントや認定カード、コミュニティ制度を活用して“ファン化”を促すと、リピーターや応援者(関係人口)が増えます。
体験ツアーや交流イベント、特産品の企画など「関わり続けたくなる仕組み」を用意することが重要です。
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- 都市住民や関心層を受け入れる
石狩市のアグリ・マッチング事業や、高知県のデュアルスタートアップのように、都市部の人材が関わるための多様な入り口を設けましょう。
農業体験・長期滞在・ビジネス研修・現地ツアーなど、都市住民が地域資源と実際に接点を持てる機会をつくることで、新たな人材の流入や定着のきっかけになります。
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- 企業・NPOなどとの多様な連携
デュアルスタートアップや五ヶ瀬町のように、行政だけでなく、地元企業・NPO・外部専門家・学生など、多様な関係者が協働することで、柔軟で持続可能な施策が生まれます。
異分野連携でアイデアやネットワークが広がります。
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- オンラインやSNSの活用
オンラインマッチングやSNS発信、プラットフォーム活用によって、距離や時間の壁を超えた関係人口づくりが実現できます。
石狩市のバーチャルマーケットや横瀬町のよこらぼのように、リアルとデジタルの双方を組み合わせることで、より多くの人と持続的につながることが可能です。
上記のような関わりを意識して、自分たちの地域で「どう実践できるか?」に置き換え、小さな一歩から段階的に進めていくことが、持続的な関係人口づくりの近道となります。
4.関係人口を増やす取り組み3ステップ
どんな自治体でも、まずは“できるところから始める”ことが大切です。関係人口を増やすための基本ステップを紹介します。
STEP1:地域資源の棚卸し
まずは自分たちの地域にどんな「ヒト・モノ・コト」の資源があるかをリストアップ。地元の魅力や強み、課題も洗い出し、活用できる材料を整理しましょう。
STEP2:小さな企画・プロジェクトから着手
一度に大きな施策を始めなくても大丈夫。まずはイベント、体験プログラム、SNS発信など、無理なく取り組めることから小さく始め、参加者の声を集めて改善していくことが成功のコツです。
STEP3:継続・発展のための工夫
関係人口を一過性で終わらせないために、継続参加を促す仕組み(ファンクラブ、サポーター制度、オンラインコミュニティ等)や、地元住民・企業・関係者との連携強化も意識しましょう。
■関連記事:【小規模自治体向け】地域資源を活用したまちづくり事例集
まとめ
関係人口を増やす取り組みは、大がかりな事業でなくても構いません。日々の活動や小さなきっかけから新しい関わりが生まれ、やがて地域の未来を支える力になります。
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