【西部ガスホールディングス株式会社】働き方の許容性を高める施策”カジュアルフライデー”『九州・沖縄企業の取組み事例vol.6』
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働く場所や働き⽅の多様化が求められる現代で、服装についても制服の廃⽌やファッションの⾃由化を進める企業が増えています。
そこで、カジュアル・フライデーという取り組みをしている企業を取材しました。
カジュアル・フライデーとは、⾦曜⽇はスーツや制服にこだわらず、⾃由な服装で通勤するという個々人の自律的な働き方を推進する取り組みの1つです。
なぜ、このような取り組みが始まったのか。
そこには、会社の成⻑と真剣に向き合ってこそ⾒えた課題があったからでした。
今回は、⻄部ガスホールディングス株式会社 ⼈財戦略グループの寺地さんと吉冨さん、海部さんに、カジュアル・フライデーを取り⼊れた背景、取り組みが浸透するまでの過程、そして職場にどのような影響があったのかをお聞きしました。
カジュアルフライデーの背景と目的
「当社はこれまで働き方改革の一環で、仕事の効率化や高度化に関する色んな取り組みを進めてきましたが、これからの時代には自律的な働き方へのシフトが重要だと考え、2019年に従業員サーベイを導入しました。サーベイを行う中で見えてきたのは、生産性意識は高い一方で、働き方の許容性が比較的低いという結果で、その解決策の1つとして、カジュアル・フライデーを導入してみようというのが始まりでした。」
と吉冨さんはいいます。
「⽣産性」の捉え⽅としては、成果や労働時間などを用いた定量的な数字による労働⽣産性の評価ではなく、アンケートから読み取れる意識を数値化したものです。⼼⾝の調整ができているか、計画段取りができているか、成果意識をもっているか、挑戦意欲をもてているかなどを調査した結果、組織側が「働き⽅の許容性」を⾼めたほうがいいのではないかという話になったそうです。
また、若手社員のなかにも、「⾃分たちで働き方を変えていきたい」という意識を持った⼈も多く、服装の自由化をはじめとする様々なアイデアがあがってきたようです。
カジュアル・フライデーは、突然はじまった取り組みではなく、社員たちの声、従業員サーベイの結果、会社の課題への取り組みなど、いろんな過程があって、そこを打ち破るためのひとつの⼿段としてはじまりました。
カジュアルフライデーをはじめるにあたり協議した内容
カジュアル・フライデーを取り⼊れる1年前に、⼥性の制服廃⽌という1つのきっかけがありまた。その時に⼥性のドレスコードを設けていなかったそうです。
そのため、⼥性の制服廃⽌の際には「この服装どうなの?」と、職場から意⾒が届くこともあったそうです。その都度説明することで、徐々に理解をしてもらってきたという背景があります。
「そうなるとカジュアル・フライデーの男性のドレスコードも必要ないよねという話になり、あとはTPOで判断しましょうということになりました。」と寺地さんはいいます。
カジュアル・フライデーを始める際に⼤きな反発がなかったのは、そのような背景があったのも関係しているかもしれません。
「カジュアル・フライデーを始めようとなったのが2020年5⽉で、コロナによる緊急事態宣⾔中で、社会的に閉塞感のある時だったんです。なので、迷いはありつつも、あえて明るい話題もいいのではと思い「楽しくやりましょう」と打ち出したら受け⼊れてもらえました。」と寺地さんはいいます。
カジュアルフライデーが定着したきっかけ
新しい取り組みを始める際、社内に定着しないまま廃れてしまうケースも少なくありません。どのように定着していったのでしょうか。
「経営層と上司の理解は⼤きかったですね。社内に社⻑のつぶやきが⾒れるアプリがあるのですが、「カジュアルで会議してます」という投稿が流れたり、上司も「こうやって着こなすんだぜ」と率先して⾒本になってくれたりしたので、社員もそこに続いてくれました。」と吉冨さんはいいます。定着にむけては経営層の旗振りや上司の理解、協⼒に加えて、多様性を認め、決して「強要しない」という風土づくりも重要であることが伺えます。
カジュアル・フライデーの本質は、自律的に考え⾃分のパフォーマンスを⾼めることなので、「いろんな格好の⼈がいていい」という価値観を定着させることも意識されたようです。
取材の際も、Tシャツの⽅もいればスーツの⽅もいて、本当の意味での「働き⽅の許容性」を体現されていました。
働き方の許容性の一方で、組織をまとめるために意識していることとは
「働き⽅の許容性」に関して、通勤がリモートになり、服装は⾃由になっていくなかで、組織としてチームをまとめるうえで懸念はないのかをお聞きました。
「当社の”地域貢献、責任、和”という経営理念に照らして、そこが揺らいでいるか?とか、この理念通りに⾏動できているか?などと懸念していることはありません。インフラ事業者の社員の特徴として強い責任感や役割意識の高さなど、真⾯⽬な⾵⼟が着目されがちですが、今後はこの強みを活かしながら、イノベーションを起こせる社員をもっと増やしていきたいしたい。」と寺地さんは語ります。
また、現在取組みを進めているリモートワークという働き⽅に対しても、「働き⽅の選択肢ひとつ」として考えておられ、考え⽅の偏りによって、やるべきことがずれないことを意識されています。
実際に、⻄部ガスホールディングス株式会社では、⽉10⽇を上限に在宅勤務を全社的に可能としており、実施の有無は上司と相談しながら選択できるような運用が行われています。施策をすることが⽬的ではなく、その活動によってお客様にどう価値を届けるのかを第⼀にされていました。
カジュアルフライデー実施後の変化と今後の課題
「カジュアル・フライデーを取り⼊れた後は、「(社内が)明るくなったね」という反応が多いです。ノー残業デーもあるので、⾦曜⽇はオシャレしてきて、そのままプライベートも⼤事にできているという声も聞いています」と、吉冨さん。
これからは、カジュアル・フライデーによって、どうアイデアの創出に繋がるのか、社内のコミュニケーションの活性化に繋げていくのかが課題だといいます。
「本⼈がどういうキャリアを歩みたいのかを⼤事にしながら、働き⽅の自律と、キャリアの自律がテーマになってくるのかなと思っています。」とも話され、「柔軟に働く」というキーワードひとつとっても、どうやって価値貢献につなげるのか?が重要だと捉えられていました。
⾃社の成⻑と真剣に向き合ったことで気づいた「働き⽅の許容性」という課題。
施策を取り⼊れることを⽬的にするのではなく、社員のパフォーマンス向上につなげ、活き活きと働ける環境づくりの⼀つとして始まった取り組み「カジュアル・フライデー」。
そのカジュアル・フライデーが、次のステップとして社員のキャリアにどんな効果をもたらしていくのかが⾮常に楽しみです。
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