【株式会社ピエトロ】全員で作る“自分たちの会社”。幸福な職場のエッセンスとは?『九州・沖縄企業の取組事例vol.13』
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福岡市中央区天神に本社を置く株式会社ピエトロ。1980年に洋麺屋ピエトロをオープンし、当時斬新だった和の素材と茹でたてのスパゲティを組み合わせたメニューや、「野菜嫌いがなおる」といわれた和風しょうゆドレッシングで一躍その名を広めました。そのピエトロが今、大きな変革を迎えているようです。人々が食事を楽しむ昼下がりのピエトロ本店 セントラーレで、取締役 サポート本部長の田島さん、サポート本部総務サポート部の西嶋さん、S&I室の前田さんに聞きました。
創業者の理念をベースに、「みんなで会社を作っていく」
「改革の発端は、2017年の経営体制の変更でした」と、田島さんは口を開きます。
「創業社長が逝去して新しい経営体制となり、今後の会社について話し合う中で、これからのピエトロは、創業社長が貫いてきたピエトロスピリッツを大切に守りながらも、これまで以上に、社員の個性を大切に、一人ひとりの声をしっかりと経営に反映するという考え方へとシフトしたのです」。
20年、30年先の未来を考えた時、社員の声が通るような会社にしてこそ、ピエトロとして在り続けられるんじゃないか――それは、経営陣に一致した想いでした。
あれから6年。会社は今、大きな変化の最中にいます。「自分たちの会社」という意識を浸透させるべく、社員のアイデアをベースとした取り組みを次々に始めているのです。
まずは社員間のコミュニケーションを強化すること
2020年、ピエトロは社員全員で「未来のなりたい姿」についてグループワークを実施。その後、「お客様、働く私たち、社会」のみんながしあわせになる未来の実現に向け、ワークで集まったたくさんの想いを集約した「PIETRO VISION」を策定しました。それが改革の根幹となっています。また、現在17のプロジェクトが進行しています。
「以前は部門間の交流がそこまで活発ではなかったんです。しかし、会社として成長を目指すためには、メイン業務を越えた横断的な繋がりを深め、一体感を醸成していくことが重要だと。一人一人の視野や人間関係も広がるでしょうし、ひいては若手リーダーの育成や会社の課題解決にもつながれば、という意図でした」。
各プロジェクトの参加者は約10人。入社2年目から課長代理ポストまでの社員は必ず1つのプロジェクトを担当します。メンバーは公募制で、2つまで兼任可能。目的達成まで毎年内容やメンバーを更新しながら、また随時新規プロジェクトも追加しながら実施しています。
一人一人が食と健康のプロを目指す
西嶋さんがサブリーダーを担当しているのは、「健康推進プロジェクト」。そのうち「食」チームが取り組むプロジェクトの一つが、「となりの部署の晩ごはん」です。リレー形式で一人ずつ健康を意識した取り組みを紹介してもらい、週に一回社内のポータルサイトに掲載。すでに140人を超える個性的な取り組みがアップされています。その他にも、「環境」チームでは、全社をリモートでつないだヨガ教室を開いたり、「運動」チームでは、全社員の歩数を合算して北海道一周達成を目指す取り組みを実施。達成時には、ドレッシングの主原料である北海道産の大きな玉ねぎが1つずつ参加者にプレゼントされました。
「“「おいしさ」と「健康」を追い続けます”という経営基本方針に沿って、ピエトロらしい取り組みをみんなで考えながら、食と健康のプロを目指しています」。
毎週土曜日に実施されている、能古島にある自社農場での農作業研修も、ピエトロらしい取り組みの一つです。「農作業では、自社商品のもととなる野菜がどれだけの手間ひまをかけて育てられているのか、実体験を通して知ることができます。部門を越えたメンバー同士の会話が生まれますし、働くことの意義や食のありがたさを感じられる場にもなっていますね」。
働きやすいオフィス環境を整える
前田さんがリーダーを務める「アップデートプロジェクト」も社内プロジェクトの一つで、働く制度や環境、自己啓発を含め社員のモチベーションアップに繋がる取り組みを実行しています。
環境整備の一環として数年がかりで進められているのが、オフィスのレイアウト変更です。コミュニケーション活性化を目指してオフィスをフリーアドレス化。それに伴ったレイアウト変更は福岡オフィスだけでも2018年からすでに3回実施されました。「“元気が出るオフィス作り”をテーマに、オフィス家具の色柄を明るく一新。社員にアンケートを取って今何が一番必要とされているかを把握した上で、求められる環境を整えています。グリーンを増やしたり、休憩スペースやWEB会議スペースの増設も、社員の声を受けて行ったものです。人財は増え続けていますし、その都度解決すべき課題は変わっていきますので、完成形はありませんね」。
2020年8月から開始したビジネスカジュアル導入にあたっては、プロジェクトの担当社員が見本となる着用姿を撮影、ビジュアルでより分かりやすい発信を心がけたそうです。「ラフで働きやすい格好でありながらも、デニムやフードはNGとし、ピエトロブランドを損なわずお客様に失礼がないよう意識しました。“清潔感”や”きちんと感”といったキーワードをベースに、春夏版と秋冬版の見本を作成しました」。こうしてオフィスにも、徐々にビジネスカジュアルが浸透してきているようです。
家族も巻き込んだワークライフバランスの取り組み
「自分たちの会社」という視点を軸にした改革の舞台は、社内に留まりません。
毎年秋には、社員の家族を能古島の自社農場に招待して、「ファミリー収穫祭」という一大イベントを開催しています。午前中に農場で汗をかいた後、美味しいごはんを食べ、午後は子どもたちと一緒にレクレーション。実は新入社員研修のプログラムの一つが、このイベント企画となっています。能古島での一日を通して、「ピエトロ」という会社とその一員として働く社員の姿を、ご家族に知ってもらおうという狙いです。
そして2021年からは社員のお子様を招いた「子どもお仕事参観デー」も実施。1年目はオフィス見学、2年目は工場見学後のピザ作りが大好評でした。
「来年度からは、春に“子どもお仕事参観デー”、秋に“ファミリー収穫祭”と、年に2回ご家族を招待するイベントを実施予定です」。
また当社では、ワークライフバランスについても注意深く配慮しています。結婚や出産、育児などと仕事との両立で生じる負担を軽減できるよう、当事者の声を聞いて制度を見直し、今年10月1日からはお子様が小学校6年生になるまで時短勤務を選択できるよう制度を改定しました。こうした、この6年間のピエトロを取り巻く変革は、数え上げればきりがありません。
最後に
取材中、次々に紹介される取り組みの多さに圧倒されました。それもトップダウンではなく、ひたすら現場の声をベースに進められている点に、何か大切なヒントが隠されていると感じます。「お客様、働く私たち、社会」のみんながしあわせになる未来を目指し突き進んでいるピエトロの姿。皆さんの目にはどう映ったでしょうか。