【社会保険労務士法人アドバンス】「スーパーフレックスタイム制」の導入で働き方の柔軟性を高め優秀な従業員の採用と定着を実現。『九州・沖縄企業の取組み事例vol.1』
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HOnPro(ホンプロ)マガジンでは、九州・沖縄の企業の「働き方」と「休み方」に対する取組みなどの好事例を取材し、同じように「働き方」や「休み方」の改善・改革に取り組もうとする企業の参考となるような情報を発信していきます。
さて、第1回目は、HOnProマガジンを運営する株式会社アドバンスのグループ企業であり、自ら積極的に働き方改革を実践している社会保険労務士法人アドバンスの「スーパーフレックスタイム制」の事例について、同法人代表であり特定社会保険労務士の伴芳夫が制度解説と併せてご紹介します。
スーパーフレックスタイム制とは?
リモートワークの浸透により場所を問わない働き方が少しずつ拡がっていますが、大手企業を中心に時間にしばられない働き方の一つとして「スーパーフレックスタイム制」を導入するケースをよく耳にするようになりました。しかし、この「スーパーフレックスタイム制」とは何がそんなにスーパーなのでしょうか?
私自身、社会保険労務士としてクライアント企業などから、「スーパーフレックスタイム制」とは法律上どのように規定されていて、通常のフレックスタイム制とは何が違うのか?という質問を受けることがあるのですが、その際は以下のようにお答えしています。
そもそも「スーパーフレックスタイム制」なんて法律上にそんな規定はございません。そして「スーパー」ではなくむしろフレックスタイム制の原型(ノーマル)に近い制度です!
何か本物のスーパーサ◯ヤ人なのかそうでないのか論争に少し似ていますが、法律に規定がないのに何をもって「スーパー」としているのでしょうか。どうやら一般的にはフレックスタイム制の中でも「コアタイム」がなく「フレキシブルタイム」のみ設定されているものが「スーパーフレックスタイム制」と言われているようです。
そうすると、最近法改正があって「コアタイム」なしのフレックスタイム制が新たに制定されたのかと思う方もいらっしゃるかも知れませんが然に非ず(さにあらず)。1987年の労働基準法改正によりフレックスタイム制の導入が可能となった当初から「コアタイム」なしの制度は認められていました。いわゆる「スーパーフレックスタイム制」は30年以上前から既に導入可能な制度だったんですね。
フレックスタイム制の概要
それではここで、フレックスタイム制について簡単に説明したいと思います。フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら自由に決めることによって、生活と業務の調和を図りながら効率的に働くことができる制度です(厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」より)。
この制度を導入するためには、まず就業規則その他これに準ずるものにより、始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。さらに、労使が書面で協定すること(労使協定)によって以下の事項を定めなければなりません。
①対象となる労働者の範囲、②清算期間、③清算期間における総労働時間、④標準となる1日の労働時間、⑤コアタイム(任意)、⑥フレキシブルタイム(任意)
なお、「コアタイム」とは労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。「フレキシブルタイム」とは労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯です。いずれも必ず設けなければならないものではありませんが、設ける場合にはそれぞれの時間帯を労使協定で定める必要があります。
以上のことから分かるように、「コアタイム」は元々任意に設定できるものであってそれを外して「スーパーフレックスタイム制」とはこれ如何に?と思うわけですが、実際にはこれまでコアタイムを設定するフレックスタイム制を導入する企業が多かったので、他との差別化という意味では分かりやすいネーミングなのかもしれません。
余談ですが、今後「コアタイム」のみならず「フレキシブルタイム」までも外した「裸の」フレックスタイム制が世に広まり始めたときに、これが何と呼ばれるのかとても関心があります。私案ですが、「裸の」ということにかけて「ネイキッドフレックスタイム制」なんてのはいかがでしょうか?
スーパーフレックスタイム制の導入をお勧めします!
散々「スーパーフレックスタイム制」というネーミングを揶揄しましたが、先にも述べたように私のオフィスでもこの制度を導入しており、その名も「スーパーフレックスタイム制」という名前で運用しています…
…ネーミングの件はさておき、この「スーパーフレックスタイム制」について、気にはなっているけどコアタイムも設定せず働く時間を完全に労働者に委ねることに雇用管理上のリスクを感じてしまい、導入に二の足を踏んでいる中小企業も多いのではないでしょうか?でもご安心下さい。中小企業であっても、ちょっとした運用の工夫とマインドセット(ものの見方)を変えることで、さほど雇用管理上のリスクもなく導入できる制度であることが、実際にやってみて分かりました。
「マインドセット」と「web会議システム」で課題を解決
まず、「スーパーフレックスタイム制」の導入を検討するにあたり、始業・終業時刻を完全に従業員に委ねてしまうことで、決まった会議や打合せがまともに開催できないのではないかという懸念が生まれました。これについてはちょっとした「マインドセット(ものの見方)」と「web会議システム」が解決してくれました。
例えば、私のオフィスでも月に1回の全体朝礼や、部門ごとに毎月実施される定期の会議があります。しかし、これまでも従業員が家庭の事情などによりその日に年次有給休暇の取得をしたり、突発的な病気などで朝礼や会議を欠席することがありました。スーパーフレックスタイム制の導入で従業員に完全に始業・終業時刻を委ねることにより、従業員が決まった時間に出社しないことで会議などに出席しないようなことが起こったとしても、年次有給休暇の取得や欠勤が発生した際と同じ取り扱いをすれば良いと「マインドセット」すると、実はそんなに気にする必要はないとことだと分かってきます。
また、「web会議システム」の活用により、会議内容を録画することが容易になりました。欠席者がいた場合は、その録画と議事録を自分の空いた時間で必ず見るように促し、意見があれば事前にアジェンダに挙げてもらうことで情報の共有に関する支障はほとんど発生していません。もちろん、極力皆が参加してくれることに越したことはないので、比較的多くのメンバーが出勤しているような時間帯に会議を設定するようにしています。
従業員が主体的に労働時間を自己管理するように
制度導入当初は、従業員に始業・終業時刻を完全に委ねてしまった場合に、従業員が本当にしっかりと働いてくれるのか(サボる者が発生しないか)ということを懸念していましたが、これは全くもって杞憂でした。なぜならば、「スーパーフレックスタイム制」であっても、月間で働く総労働時間は予め決められているため、ある日について標準労働時間より短く働くと、必然的に同月内の別の日について標準労働時間より長く働かなければなりません。そのため、ほとんどの従業員はそのような偏りや無理が発生しないように、標準労働時間に近い労働時間で働いています。本人のその日の体調や子どもの習い事の送迎のような家庭の事情に合わせて、いつもと異なる労働時間を選択できるというのがこの制度の本質ではないでしょうか。
また、「スーパーフレックスタイム制」を導入したことによる思わぬ副産物として、従業員が主体的に労働時間を自己管理するようになったことが挙げられます。先に述べたように、各月で予め定めた総労働時間は必ず働かなければならないため、その時間に向かって自ら労働時間を把握しコントロールする必要があるからです。このことにより、従業員の時間管理意識が高まり、効率化を各人が自ら考えるようになったのは大きな収穫でした。また、クラウド型の勤怠管理システムの導入で、従業員各人が自らの労働時間を管理しやすくなったのも、「スーパーフレックスタイム制」導入の後押しになりました。ちなみにアドバンスでは、勤怠打刻をSONYのコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」で行っています。勤怠打刻をする度に可愛い動作や挨拶をしてくれるので、愛着が湧いて勤怠打刻の手間が苦になりません(笑)。
まとめ
以上のように、アドバンスにおける「スーパーフレックスタイム制」の導入は、労使双方ともに大きなメリットがありました。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に導入した「在宅勤務制度」との組み合わせによって、働く場所と時間に縛られない柔軟性の高い働き方が実現できました。その結果、優秀な人材の採用や定着に繋がり、とても働きやすい職場環境になったと自負しています。
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